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生まれてきたことを祝う日 |
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部活の練習を終え、緑間が校門を出てから数分。 待ち構えたように目の前に現れた人影を見て、立ち止まった。 「なぜ、オマエがここにいるのだよ」 「今日が俺の誕生日だからだ」 そう言い渡されて、緑間は何度か瞬きを繰り返す。 8月31日。 青峰の誕生日だ。 「そういえば、そうだったな。おめでとうなのだよ」 淡々と用意されたような言葉を述べると、がっしりと肩を組まれた。 至近距離に近付いた顔が耳元に息を吹きかけてくると、反射的に肩がびくりと震えた。 「かはっ。相変わらず耳が弱いんだな」 「うるさいのだよ。離れろ」 嬉しそうに笑う青峰の顔面に手のひらを押し付けたが、離れはしなかった。 変わりにその指の股を舌先で舐められる。 「青峰っ!」 湿った感触に勢いよく手を放すと楽しそうに笑う顔が側にあった。 「誕生日だから、プレゼントをもらいにきたんだよ」 「ずうずうしいヤツなのだよ。悪いが何も用意していな・・・」 その緑間に口唇が重なって、塞がれる。 驚いたように目を見開いたままの緑間が逃げないようにか、その頭を両手で押さえられ、角度を変えて何度も口付けをされた。 「おら、口開けよ」 言われるままに開けた口の隙間から青峰の舌が歯列を割って入り込むと、上顎から順にその形を辿るように蠢き、蹂躙していく。 上手く呼吸が出来ず、さらに口内から伝わる感触と感覚が背筋を通って、腰に響く。 「・・・んっ、・・・ぁ」 熱い吐息と共に零れる唾液が顎を伝っていくのがわかる。 それでも青峰は緑間を貪るのを止めず、絡めた舌でその身を堪能していた。 緑間は震える膝を保つ事ができずに、青峰の腕を縋る様に掴んだ。 そこで、ようやく青峰は緑間を解放した。 呼吸が乱れたままの緑間の口の端を指で拭って、その唾液で濡れた指先を緑間に見えるように舐める。 「青峰・・・」 「お前が欲しいから、よこせ」 「バカを言うな」 「誕生日プレゼント、用意してなかったんだろ」 「オレはそんなに安くないのだよ」 「でも、もう、オレのもんだろ?」 「その自信はなんなのだよ」 「オレのこと、好きだろ?」 中学時代、散々繰り返したやり取りが脳裏を過ぎっていく。 青峰の本気を受け止めるだけの余裕はなく、浮かぶ未来を描くことができなかったのだ。 (だから、嫌いだと言い続けた) それでは、今なら、どうだ? 自問自答する。 (今も、まだ、無理だ・・・) 青峰がバスケを好きだと、再び思うようにならなければ、この想いに依存するだろう。 (それは、ダメだ) バスケが好きだと、ただ純粋にそれだけを求めているくせに、それを否定し続けている今、は、まだ、無理なのだ。 「まだ、嫌いなのだよ」 溜息と共に、吐き出す想いは、偽りなのかもしれない。 「嘘をつくなよ」 「嘘じゃない」 「じゃあ、いつなら、好きだって言うんだ」 「それは、オレが決めることじゃないのだよ」 それは、青峰が決めることだ。 真っ直ぐに突き刺さるような視線と情熱を受け止めて、緑間は見詰め返す。 深い青の、海色の瞳が、まだ濁っている。 何かに縋りたくて、何かを求めたくて、手を伸ばしているのは代替品ばかりだ。 (オマエが欲しがるものをオレは与えてやることができない) 強さの質が違えば、敵うものでもない。 赤い、火の様な背中と存在は淡いけれど、濃い影の二人が、きっと、近いうちに。 青峰の望みを叶えるに違いない。 (それがオレではないけれど) 残念には思わない。 最初からわかっていたことだ。 その日がくれば。 そうなれば。 きっと。 言える。 「なんなんだよ。なんで、俺のものになんねえんだよ」 抱き締めてくる熱い体温は、青峰そのもので。 緑間は、応える代わりにただそっと抱き返した。 「誕生日を忘れていたわけではないのだよ。オマエが生まれてきてよかったと伝える方法がなかったのだよ」 静かに。 優しく。 緑間は青峰を受け止めた。 誕生日おめでとうなのだよ。 |
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2012/08/31 |
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青峰くんの誕生日を緑間くんに祝ってもらいました(笑)。 |
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