provocative

 
     
 


ふとした瞬間に、その白い首筋に噛みつきたくなる衝動に駆られる。
普段は身長差もあって、それほど視線は行かない。
時々、例えば靴ひもを結び直す為に屈んだ時、その露わになった首筋に誘われる。
女性特有の細く滑らかな曲線とは違い、筋張った真っ直ぐな線を描いているのだけれど、色白い肌のせいか、とても艶めかしく見えるのだ。
もちろん、そんな深い理由などを考える事もなく、ただ本能の赴くままに行動を移すのだけれど。
一筋の汗が流れたその首筋に、躊躇せずそのまま口付けた。
汗に濡れ、しっとりとした肌は思っていた以上に触れやすく、口唇に吸い付くように揺れた。

「あ、青峰・・・?」

屈んだ体勢のまま、緑間は硬直していた。
何をされているのか瞬時に把握したものの、対処方法は思い付かなかったのだろう。

「うまそうだと思って」

しれっと答えて、すぐに離れた。
持っていたボールを2、3度ついて、片手でパスを出す様にシュートを放つ。
ボールはそのままゴールへと吸い込まれた。

「オレは食べ物ではないのだよ」

動揺を隠せない緑間が震える指で眼鏡をそっと持ち上げた。

「知ってるし。でももちみてぇじゃん?」
「バカを言うな・・・」

部活の練習後、一人居残ってシュート練習をしていた緑間を見付けたのは失敗だった。
この状態で二人きりというのは、自制しきれないかもしれない。
かといって、せっかくの機会を逃すのはもったいないとも思った。
青峰は、このまま一気に攻めたら確実に逃げられる事を知っていた。
欲しいからこそ、失うような方法を選んではならないのだ。
視線。
それから、その容姿。
プライドの高さとストイックな姿勢。
惹かれたのは、言葉にできるようなものではなかった。

「1on1でもするか?」
「断る」
「即答かよ」

青峰が笑う。
そもそも、緑間とは色々な意味で種類が違う。

「どんな体勢でもシュートが入るオマエのディフェンスをするなら、練習後ではなく練習前がいいのだよ」
「負けたくねえって事かよ」
「負けたいと思う人間がどこにいるというのだよ」
「そりゃそーだ」

青峰は緑間にボールを投げ渡した。
受け取ったボールをそのままシュートする。
静かに弧を描き、ボールはすとんとゴールに入った。
スリーポイントラインからさらに離れた場所から、いとも簡単に決める。
その精度は、自分のシュートと似ているが、全く異なるものだ。
努力という練習の賜物。
それゆえの、ゆるぎない自信とプライド。

「緑間」

ゴール下に転がったボールを拾って、青峰はそのまま緑間の前に移動した。
反射的に身構えた緑間に顔を近付けて、挑発するように口の端を歪める。

「今日じゃなくていーけど、1on1しようぜ」
「・・・・・・」

直接対峙すれば、わかる事も伝わる事もあるだろう。
それを期待しているわけではないが、自分の事だけを意識させたいとは思う。
この真っ直ぐな双眸を捕えられたなら、二度と離さない。

「青峰」

どこまで気付いているのか。
それとも何も知らないのか。
その目に映る自分を見詰めて、青峰は笑う。

「NOは、なしだぜ?」
「仕方のないヤツだ」

緑間はふ、と少しだけ口元を緩めた。



終わり



 
     
 

2012/06/14

 
     
 

帝光中学時代 2年生。
青→緑。
青峰は常に緑間を食べたいと思っています。
provocative=挑発的。