黄緑

 
  ももしさんへの誕生日祝い その1  
     
 


暗闇の中を彷徨う、夢。


触れた指先。
重なった唇。


目を開ければ、笑う顔が側にある。
安心する気持ちは、再び微睡みを誘う。


「緑間っち」
呼ぶ声。
甘い。


ぱちんっと弾けて、目が覚めた。
夢は、曖昧で、不安ばかりを残す。
消える恐怖は、じわじわと心を侵食するから、性質が悪い。
緑間はゆっくりと上体を起こし、隣りで眠る人を起こさないように気をつける。
遮光カーテンの閉じた部屋は、真っ暗で、さらに眼鏡のない緑間には、何処に何があるのかさえその輪郭も不鮮明だった。
ただ、枕元についた手の先に吹きかかる弱い寝息が、そこで生きていることを教えてくれる。
そっとその手元に視線を落とせば、淡い黄色が浮かんで見えた。
目印は黄色。
いつも迷いなく手を引いてくれる愛しい存在が眩しい。
指先でその髪を撫でれば、さらさらとした感触がある。

(愛しいと思うことを幸せだと思え)

誰かが側にいることに安心する。
その誰かが、黄瀬で良かったと、思う。
夢でも。
現実でも。
いつでも。
思うのは、黄瀬のことばかりで、それでいいと、理解すれば、この手を放したくなくなるのだ。

(オマエはいつもオレが離れていくことを不安に思っているけれど、オレもオマエが離れていくことが怖いのだよ)

黄瀬の額に唇を落とし、緑間はもう一度寝転がる。
あたたかな身体に触れて安堵するのは、まるで子供のようだ。
不意に、髪を撫でる手を掴まれて驚く。

「起こしたか?」
「ん、気持ちいいからいいっス」

寝惚けているのか、その返答は的を得ない。
黄瀬が緑間の手を握ると、再び規則正しい寝息をたて始める。
指先からも伝わる熱は、緑間の眠りも誘う。
夜明けまで、まだ遠い。
緑間は黄瀬の手を握り返して、目を閉じた。
闇の中で震えずに済むのは、間近にある温もりのおかげだと、感謝する。
幸せの形は目に見えないけれど、確かにここにあった。



終わり



 
     
 

2013/04/15