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緑黒 |
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手を伸ばして、触れたかったことがある。 空よりも濃くい水色の瞳が強い光を持ってその先を見つめた瞬間、どうしようもなく両手が震えた。 体格にも恵まれず、その才にも恵まれず、それでも尚、負けじと挑む姿は、酷く美しかった。 「緑間君?」 昼休みの図書室は、静寂に包まれ、グラウンドからの歓声が窓の向こうの遠くから響いて聞こえた。 他の生徒が寄り付こうともしない蔵書の棚の前で背表紙を眺めていた緑間は、声に呼ばれて振り返るけれど、その姿を見失う。 また、だ、と思う。 それでいいと安堵する想いとどうしてだと自責する想いが振り子の様に揺れ、それは、少しずつ降り積もっていく。 「ここですよ」 声のする方へと視線を下げれば、間違いなくそこに居る。 こんなにも近くに在るというのに、どうしても見つけられない。 (ずっと、触れていれば、この手に繋いでいれば、そんなこともない…) 不可能な事を思い描いて、自嘲する。 「なんなのだよ、黒子」 用件を先に求めるのは、自分の為だ。 緑間は、その両の手を抑える様に腕を組む。 「この本、探していましたよね。返却されたので、早い方が良いと思ったんです」 「オマエは図書委員だったのか?」 「違います」 確かに、黒子が手にしていた本は、探していたものに違いなかった。 けれど、そんな話を黒子と交わした記憶はない。 いつ、どこで、それを見ていたのか。 (愚問なのだよ) 黒子を見失ってしまう緑間には、それを確かめる術などなかった。 「確かにこれは読みたかった本なのだよ。礼を言う」 「……よかった」 ほっとしたように微笑んだ黒子から、緑間はその本を受け取った。 薄い色素の髪がふわりと揺れる。 油断をすれば撫でてしまいそうになるのは、身長差とそれから……。 ふと、生まれた感情をなんと呼ぶのか、緑間にはわからなかった。 ただ、きっと、その感触はひどく柔らかく優しいのだろうと、それだけを思った。 「緑間君?」 「なんでもないのだよ」 ふいとその両目から顔を逸らしたけれど、自分がどんな本を探していたのか、忘れてしまったらしい。 背表紙の文字が全く頭に入ってこないのだ。 「最近読んだ本でおもしろかったものはありますか?」 「オレが読んで、オマエが読めるものなど、とっくに読みつくしているくせに聞くな」 黒子が知っているように、緑間も知っていることがある。 一度、黒子が落とした図書カードを拾った。 そこに並んだタイトルは、自分と負けず劣らずで驚いたのだ。 だから、よく覚えている。 「そんなことありませんよ」 そうして、黒子が笑うごとに、心臓がひとつ、ふたつ、跳ねることまでは知られたくはなかった。 「そんなことあるのだよ」 緑間は持っていた本で黒子の額をそっと叩き、その場を先に離れた。 これ以上一緒にいたら…。 (いたら…?) 何をしようというのだろう。 カウンターに本を差し出して、緑間は首を傾げた。 また少し、心に何かが降り積もった。 終わり *** まこりんにとってたくさんの幸せがありますように☆ お誕生日おめでとう*:.。・*:.。*。 |
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2014-02-24 00:00:11 |
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