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青黄 |
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「オレね、アンタのことが好きなんスよ」 そう言って、黄瀬が青峰を真っ直ぐに見つめた。 そこに笑顔はなかった。 かわりにあったのは、酷く好戦的な強い光の宿る瞳だけだった。 青峰は、黄瀬の視線を間近で受け止めるだけで、何も言えずにいた。 好きだと、思っていたのは、自分だけだと思っていたからだ。 いつからだったのかは、わからない。 黄瀬の視線が全部自分だけに向けられたらいいのにと、一度思ってしまったが最後、転がり落ちるように惹かれて恋した。 負けず嫌いで、諦めが悪くて、誰もが早々にやめていくというのに、何度も何度もくらいついてきた。 それが、嬉しかった。 でも、言えなかった。 「…ねえ、なんか、言って」 せっかちな黄瀬にしては、随分と待っていた様に思う。 青峰はその黄瀬の目に見惚れながら、透明で黄色できらきらした何かを思い出そうとしていた。 一言、答えればいいだけだというのに、それができなかった。 「青峰っち?」 まるで石膏像のように固まってしまった青峰に黄瀬が一歩近付く。 知っていた。 黄瀬の、この、縋るような目に、最初からずっと弱いのだと。 1ON1で、その実力で、どんなに黄瀬の上にいたとしても、この表情一つでいとも容易く陥落してしまうのだ。 それくらい、青峰の黄瀬に対する壁は脆く崩れやすかった。 一歩、進めばそれだけで全てが解決するのだ。 耳元でほらほらと囁く自分の声がする。 けれど、その一歩が踏み出せずに、ただ、黄瀬の両目に釘付けとなった自分もここにいる。 青峰の心内を図りかねているのか、黄瀬の表情がどんどん曇っていく。 そんな顔をさせたかったわけじゃない。 その手を掴んで引き寄せて、それで一言、俺もだと伝えるだけの、それがどうしてできないのか。 青峰は深呼吸をひとつした。 そして、考えることをやめた。 「俺も」 黄瀬の目が大きく見開かれた。 きらきらとした黄色の球体が零れ落ちるかと思った。 咄嗟に差し出してしまった手をどうすることもできなくて、青峰はそのまま黄瀬の手首を掴んで引き寄せた。 「……、黄瀬が好きだ」 抱き締めた身体が思っていたよりも薄く細いことに驚きながら、それでも両手を背中に回し、背中を優しく撫でた。 「あ、青峰っち……」 黄瀬が震えているのが、ようやくわかった。 笑顔を見せなかった時点でどうして気付くことができなかったのか。 軽い気持ちじゃなく、本気だからこそ、緊張するのだ。 (バカだな) 自分も黄瀬も。 青峰は満面の笑顔を浮かべた。 黄瀬がどんな顔をしていたのか、見ることができないことだけを残念に思った。 終わり *** いちえむさん、お誕生日おめでとうございます*:.。・*:.。* 幸せたくさんな一年になりますように☆ |
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2014-02-25 00:02:09 |
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