黒緑
しらたまさんへの誕生日祝い☆

 
     
 


二人きりの時、顔を近付ければ、反射的に目を閉じるから、触れるか触れないかのぎりぎりで、その閉じた目を見るのが好きだと最近気づいた。
素直に受け入れてくれるから、その瞬間が嬉しい。
震える睫毛を見ていると、唇に届く息が熱い。
数秒そのままでいると、意外とせっかちなキミはパチリと目を開ける。
眼鏡を押し上げるように抜きとって、間近になった硝子玉のような目に映る自分を見つめながら、唇を重ねれば、文句はそっと口内に消えていく。
再び、目を閉じる様子を確認して、あとは、求めるままに貪れば、背中や腰が震える程にぞくぞくして、こんなにも側にいるのに足りなくて、つらくなる。
口の端を舐めとって、啄ばむように唇を吸って、それから、もう一回噛みつくようなキスをした。
いつのまにか首にまわされていた手が、そっと背中を撫でていく。
もう、これ以上近付けないはずなのに、もっと傍にいきたいと望んでしまう。
甘い吐息が乱れてゆくのを感じて、抱き締め合った。

「…黒子」

呆れたような声だったけれど、息苦しさから解放されたからか、まだ少し熱っぽい。

「なんですか?」

なにか言いたげな眼差しを受け止めて、知らないふりをする。
知らないふりをしていることをわかっているからか、それから先の言葉はなかった。

「僕は好きですよ?」

消えた言葉を探して、告げる。
それは、逃げ場を失くすということだ。
先回りをして、他の選択肢を残さないように。

(我ながら酷い)

それくらいしなければ、きっと、繋ぎとめられないと思っている。
真面目でマイペースで頑固で、だけど、自由な人は、些細なことがきっかけで、きっとこの手を離れていくだろう。
それは、不安ではなく確信だった。
こつんと、額同士が重なる。
熱を計るように、優しかった。

「言葉は、必要ないのだろう?」

そう言ったキミは、こめかみに、頬に、唇に、かわいいキスをしてくれた。

(敵わない)

いつだって、悔しい思いをするのは僕の方だ。

「言葉を聞きたい時だってあります」

お返しをするように、もう一度深い深い口付けをする。
絡めた舌の熱は、まだおさまっていないようだった。
逃げられないように、じわじわと追い詰めていきたいのだけれど、それは容易なことではないから。
少しずつ。
少しずつ。

「オレも好きなのだよ」

その声は、耳元でそっと囁かれた。
言葉と熱の威力に、捕らわれたのは、僕の方。



終わり



 
     
 

2013/10/19