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黒緑 |
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二人きりの時、顔を近付ければ、反射的に目を閉じるから、触れるか触れないかのぎりぎりで、その閉じた目を見るのが好きだと最近気づいた。 素直に受け入れてくれるから、その瞬間が嬉しい。 震える睫毛を見ていると、唇に届く息が熱い。 数秒そのままでいると、意外とせっかちなキミはパチリと目を開ける。 眼鏡を押し上げるように抜きとって、間近になった硝子玉のような目に映る自分を見つめながら、唇を重ねれば、文句はそっと口内に消えていく。 再び、目を閉じる様子を確認して、あとは、求めるままに貪れば、背中や腰が震える程にぞくぞくして、こんなにも側にいるのに足りなくて、つらくなる。 口の端を舐めとって、啄ばむように唇を吸って、それから、もう一回噛みつくようなキスをした。 いつのまにか首にまわされていた手が、そっと背中を撫でていく。 もう、これ以上近付けないはずなのに、もっと傍にいきたいと望んでしまう。 甘い吐息が乱れてゆくのを感じて、抱き締め合った。 「…黒子」 呆れたような声だったけれど、息苦しさから解放されたからか、まだ少し熱っぽい。 「なんですか?」 なにか言いたげな眼差しを受け止めて、知らないふりをする。 知らないふりをしていることをわかっているからか、それから先の言葉はなかった。 「僕は好きですよ?」 消えた言葉を探して、告げる。 それは、逃げ場を失くすということだ。 先回りをして、他の選択肢を残さないように。 (我ながら酷い) それくらいしなければ、きっと、繋ぎとめられないと思っている。 真面目でマイペースで頑固で、だけど、自由な人は、些細なことがきっかけで、きっとこの手を離れていくだろう。 それは、不安ではなく確信だった。 こつんと、額同士が重なる。 熱を計るように、優しかった。 「言葉は、必要ないのだろう?」 そう言ったキミは、こめかみに、頬に、唇に、かわいいキスをしてくれた。 (敵わない) いつだって、悔しい思いをするのは僕の方だ。 「言葉を聞きたい時だってあります」 お返しをするように、もう一度深い深い口付けをする。 絡めた舌の熱は、まだおさまっていないようだった。 逃げられないように、じわじわと追い詰めていきたいのだけれど、それは容易なことではないから。 少しずつ。 少しずつ。 「オレも好きなのだよ」 その声は、耳元でそっと囁かれた。 言葉と熱の威力に、捕らわれたのは、僕の方。 終わり |
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2013/10/19 |
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