黄緑
秋汰さんへのお誕生日祝い☆

 
     
 


「ねえ、緑間っち、手を出して」

吐く息が白く浮かんで消える、外灯の下。
コートにマフラーに手袋、ムートンブーツとニット帽。
完全防寒で挑んだ待ち伏せは、だいたい一時間ほどで完了した。
黄瀬の姿を見とめた緑間に、10分ほど、語尾がバカという説教をくらいつつ、最終的にだって会いたかったんスよと、笑った黄瀬に緑間は苦虫を噛み潰したような表情で、オレもだと言わせただけでも大収穫だった。
緑間がグレーの手袋をした手を黄瀬の前に差し出すと、黄瀬はコートのポケットからハート型の小さなチョコレートを溢れるほどのせた。
一センチほどのハート型のチョコレートは全部黄色の包装紙にくるまれている。
緑間の手のひらの上は、黄色のハートで埋め尽くされた。

「なんなのだよ」
「オレ」

愛おしそうにその手のひらの上のチョコレートを見つめて、黄瀬は満足そうに微笑んだ。
緑間の手の上に溢れるくらいのオレがいるという事実がたまらなく嬉しい。
ただの自己満足だったけれど、そうでもなければ、きっと、心が足りない。
緑間はそのチョコレートを少し地面にこぼしながら、コートのポケットに入れた。
そして、落ちた数個のハートを拾って、手袋をはずす。
黄色の包装紙を開けば、茶色のチョコレートがそこにある。
緑間がその一粒を口に運んだ。
黄瀬は、一連の動作を目で追うことしかできず、ただ、ただ、緑間を見つめた。

「これが、オマエのハートなら、簡単に食べられてしまうのだよ」
「……、緑間っちのえっち」
「バカか」

黄瀬の言った意味が通じているのか、いないのか。
緑間は表情ひとつ変えやしない。
少し背伸びをして、緑間に口付ければ、甘い甘いチョコレート味が広がっていく。

「これも共食いになるんスかね?」
「オマエのハートが減った分はこれで埋めるのだよ」

緑間がコートのポケットから、彼が愛飲してやまない、お汁粉缶を取り出した。

「これ、緑間っち?」
「正確に言えば、オレの一部になるはずだったもの、だ」

渡された缶を受け取って、黄瀬は笑った。
身体の中で、一緒に混ざり合うって、どんな気持ち?

「緑間っち、もう一回キスして」

チョコレートとおしること同じように、お互いの心が混ざり合えばいいのに。
黄色の包装紙にくるまれたハート型のチョコレートを見たとき、これを食べる緑間のことしか思い浮かばなかった。
バカみたいに、黄色を選んだ。
そこには、赤も青も紫も緑も水色もオレンジも、いろんな色があったというのに。
黄色だけを拾い集めた。
それを、緑間に届けたかった。
自分のハートを緑間に。

(いつからこんなに…)

自分は緑間だけになっていたのだろう。
チョコレートみたいに緑間に食べられたら、楽になるのだろうか。
おしるこみたいに緑間を飲んだら、楽になるのだろうか。

「黄瀬」
「甘いっスね」
「今度は緑色のハートも持ってくるのだよ」
「え?」
「オレのハートはオマエが食べればいい」

淡々と言う緑間の顔は真っ直ぐに黄瀬を見つめていた。
なんという、殺し文句。
ハートどころか、何もかも食べられた気分になってしまう。

「緑間っちのハート、オレにくれるんスか?」

バカみたいに幸せな、バカが二人。
外灯の下で抱き合った。



終わり



 
     
 

2014/02/01