好きとか嫌いとか

 
     
 


好きとか。
嫌いとか。

一緒にいたいとか。
話したいとか。
いまだによく、わからない。

「緑間っちに会いたかったんスよ」

黄色の髪をきらきらさせて、そんな事を簡単に言う。
誰かに会いたいと思った事がない。
だから、その気持ちが理解できない。

「会ってどうするのだよ」
「話がしたいんス」

話す事など何もなくて。
ただ、バスケの話をする。
そして、黄瀬の話を聞く。
知らない事ばかりだ。

「楽しそうだな」
「でも今が一番楽しいっスよ?」

へらっと笑う。
一緒にいるだけで、何か変化があるのだろうか。

「緑間っちは?オレといて楽しくないんスか?」

逆に聞き返されて、返答に困る。
楽しいか楽しくないかと言われたら、楽しいのかもしれない。
楽しくなかったら、きっとこの場にいないからだ。

「楽しくないわけではないのだよ」

そう答えたら「素直じゃないっスね」と笑われた。
こんな風に話せる相手は少ない。
ああ、そういう事か。
突然、理解して納得する。

「黄瀬がいなかったらこの時間がないと思えば、必要なのかもしれないのだよ」

嫌なら断れば良いだけの話だ。
それをメールひとつで呼び出され、会って話を聞くくらいには、嫌ではないという事だ。

「緑間っちぃ〜」

目の前の黄瀬が耳まで赤くして、頭を抱えている。
ああ、また、何かを言い過ぎたらしい。

「なんで、今、そーゆー事言うんスか」
「オマエが楽しくないのかと聞いてきたからなのだよ」
「緑間っちはオレをどうしたいんスか?」

拗ねた様に頬を膨らました黄瀬が上目遣いでこちらを見てくる。
反応がいちいち子供っぽい。
あまり、他では見ない姿かもしれないのだろうが、正直うざい。
それでも、これが黄瀬なのだ。

「黄瀬はどうされたいのだよ?」
「・・・聞き返しは卑怯っスよ。何をされたいのかって聞かれたらキスされたいっスけどね」

反撃とばかりに口の端を歪めて、意地の悪い表情をする。
挑発してくるのならば、のってやらない事もない。

「キスでいいのか?」

え?と驚く黄瀬の頬に口唇を寄せた。
直接口唇でもかまわなかったが、黄瀬が本当に喜びそうだと思ったので、やめた。

「みみ緑間っち?!」

案の定、目を丸くして驚く黄瀬がいる。
想定内の反応に満足をした。

会う。
話を聞く。
わがままに付き合う。
相手の反応を確認する。

この時点で、自分にとって黄瀬は特別なのだろうと知る。

「キスしてくれんなら口唇がいいっスよ」

黄瀬から慣れた風に指先で顎を持ち上られると、そのまま口唇が重なった。
触れるだけですぐに離れた黄瀬は、嬉しそうに笑っていた。

「オレ、緑間っちの事好きっス」

そう言われても好きという感情がよくわからない。
ただ、嫌いではない。
そうして、答えに迷っていると先に黄瀬が言う。

「無理して答えなくていいっスよ。答えはオレの事好きになってくれた時でいいっスから」

好きにならないという選択肢はないのだろうか?
目の前で自信に満ち溢れた顔をする黄瀬の裏に不安も見え隠れしている。

「嫌いではないのだよ」

いつもと同じ答えを返すと、黄瀬は決まってほっとしたような笑みを浮かべるのだ。
本当はその顔が苦手だ。
それをごまかすように、手を伸ばして、黄瀬の頭を撫でる。

(これが、好きという感情?)

まだはっきりとしない気持ちを抱えたまま、今日も時間が過ぎていく。



終わり



 
     
 

2012/06/25

 
     
 

緑間の独り言みたいな。
自覚がないみたいな。
緑間を書くのはむつかしいです。