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相談中 |
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「ねえ、どうしたらいいんスかね」 ハンバーガーショップの窓際、一番奥の席で、黄瀬は先程から同じ言葉を繰り返していた。 練習帰りにつかまって、付き合わされているのは黒子である。 メールで呼び出され、バニラシェイクにつられてやって来たのだが、やはり無視しておけばよかったと思い始めていた。 「どうしようもないんじゃないですか?」 うだうだぐちぐちとする黄瀬にうんざりして、答えもおざなりになる。 「・・・・・・。そうっスよね・・・」 黄瀬の乾いた笑い声が寂しく響く。 緑間からメールの返事も来ない、電話をかけても切られる、連絡が取れないと半分涙目で訴えられたのは、15分ほど前の話だ。 黄瀬の話を聞く限り、喧嘩というほどの事ではなかった。 些細な擦れ違いが重なった上の誤解のようなものだ。 話を聞いた黒子でもわかる位なのだから、それを緑間が気付いていないわけがない。 そうだと言うのに黄瀬がどうして行動に移せないのかと考えれば、答えは簡単である。 「緑間君に何をしたんですか?」 原因は他にあるという事だ。 あまり深く係わりたくはなかったが、ある程度解決しない事には解放されそうもない。 明日は朝から練習がある。 できれば早々に帰宅して休みたいのが黒子の本音だ。 バニラシェイクを飲み干して、トレーの上に置く。 「・・・・・・」 「黄瀬君が後悔するような事をしたんですか?」 黄瀬からは返事がない。 それは、質問を肯定しているのと変わらない。 「原因が黄瀬君で、黄瀬君がそれをわかっているのなら、僕に相談しても無駄なんじゃないですか?」 「・・・誰かに聞いて欲しかったんスよ」 黄瀬がしょんぼりとした空気を纏ったまま、顔をあげた。 「何をしたんですか」 ある程度想像はついたが、興味本位で問いかける。 黄瀬は眉間に皺を寄せ、気まずそうな表情を隠さずにぽつりと答えた。 「キスして押し倒した」 「・・・意外と積極的ですね」 黄瀬の話を聞いている限りでは、まだ緑間とは付き合ってはいないはずだった。 我慢しきれずに勢いでというのはわかるが、二人の間が進展するきっかけにはなったのかもしれない。 ただ、逆効果になっていないことを願うばかりだ。 「最後まではやってねぇっス」 「それは黄瀬君を見てればわかります。せいぜい首筋に噛みついたところで殴られるか蹴られるかして、逃げられたんじゃないんですか?」 「黒子っちぃ〜」 情けない声を上げる黄瀬を見れば、それが図星だとわかる。 キスされて、押し倒されて、蹴り飛ばして逃げた緑間が簡単に黄瀬のメールや電話に応えるとは思えない。 喧嘩以前の話だ。 「それは二人の問題というか、黄瀬君の問題でしょう?僕に相談するのはお門違いです」 「厳しいっスね」 あまりにも情けない表情をするので、黒子は仕方ないなと、助け船を出す事にする。 半分は黄瀬の為でもあったが、もう半分はさっさと帰りたい為だった。 「僕から見て緑間君は黄瀬君には気を許してるように見えます。押し倒された事に怒ってるのではなくて、急にそんな空気になったのが恥ずかしかったんじゃないのでしょうか?もちろん憶測にすぎませんが。なので、直接会いに行って逃げ出そうとする緑間君を捕まえるのが一番てっとり早いと思います」 「黒子っち!」 黄瀬の目がぱあああっと明るく輝くのを見ながら、そんな簡単な事じゃないでしょうけど、とは言えなかった。 それでも、鈍いのか故意なのか計算なのか、よくわからないが、自分から行動に移す事のない緑間にはしつこく積極的に追いかけた方が効果的だろう。 真面目で優しい人は、ほだされ易い。 「効果があるかどうかは分かりませんが、当たって砕けろです」 「やっぱり黒子っちに聞いてもらって良かったっス」 満面の笑顔の黄瀬が席を立つ。 「なにもしてません」 「これで、もうひとつバニラシェイク買ってくださいっス。ありがとう、黒子っち」 ポケットから小銭を出して、黒子のトレーの上に置くと、黄瀬はそのままハンバーガーショップを出て行った。 (うまくいくとは思いませんが・・・) 諦めの悪い黄瀬が近いうちに緑間を堕とすのは、なんとなく想像ができる。 それが今ではないという事だ。 黒子はトレーを片付けてからバニラシェイクを買って、店を出た。 (バニラシェイク2つ分では安かったですね) この後届くであろう、当たって砕けた報告にどうやって答えようかと考えつつ、黒子は帰路についた。 終わり |
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2012/06/26 |
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黒子視点。 |
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