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帰り道 |
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隣りを並んで歩く。 学校からの帰り道。 今日の練習の話、それから、数学の話。 ぽつりぽつりとしゃべっては、一歩ずつ進む。 夕日がオレンジ色に歩道を染めるから、影が濃くなって見えた。 ふと、レンガの塀を見たら二人の影が重なっている。 「なに、笑ってるんスか?」 黄瀬が顔を覗き込んでくる。 間近に寄った顔が影の上ではもっと近い。 「なんでもないのだよ」 緩んだ口元を引き締めると、黄瀬の口唇が触れた。 柔らかく温かい。 影より後に影と同じ形を辿る。 「緑間っち、逃げなくなったっスよね」 黄瀬が笑う。 「オレがキスしてもそのまんま受け止めてくれるようになって、それが嬉しいっス」 真っ直ぐに見つめてくる視線に込められた想いまで見えてしまえば、さすがにそれは受け止めきれずに、先に目をそらしてしまう。 「緑間っち」 子供が甘えるようにぎゅっと抱き締めてくる。 応える様にそっと腰の辺りに腕を回すと、二人の影は一つになった。 黄瀬は少しの間だけじっとしていたけれど、ちょうど目に入ったのか、わざとなのか、首筋に口唇を落とし、強く吸い付いた。 「バカかっ」 べしっと後ろ頭を叩いた時には、すでに時遅し。 今は見えないけれど、紅い痕が残ったに違いない。 「だってちょうど抱き締めると目の前に緑間っちの首が見えるんスよ。噛み付かないだけマシだと思って・・・ってぇえええ」 確かに噛みつかれてはさらに困るが、問題はそこじゃないと、もう一度黄瀬の後頭部を叩く。 そのタイミングで、黄瀬から離れると夕日はもう建物の影に消えていた。 「帰るぞ」 頭を押さえている黄瀬を置いて先に歩き出す。 「ま、待って」 慌てて隣りに並んだ黄瀬は「殴るときはもうちょっと手加減して欲しいっス」と唇を尖らせた。 もう影は消えてしまったけれど、近付いた距離は消えやしない。 「殴らせるような事をしなければいいのだよ」 「じゃあ、見えないところならいい・・・?」 言い終わる前にこちらの顔色を伺うように顔を向けてくる。 「・・・見えないのなら考えてもいいのだよ」 妥協案に同意すると黄瀬が目をまんまるくさせた。 「マジっスか?」 「オマエの目は正直すぎるな」 「オレんち寄っていかないっスか?」 「遠慮する」 「えー、じゃあ、いつならいいんスかぁ」 「いつだろうな・・・」 「ぜったい近いうちに遊びに来て欲しいっス」 「下心だらけなのだよ」 「もちろんっス」 照れも隠しもせずにきっぱりと言い切る黄瀬はある意味男らしい。 (これは近いうちに押し切られそうだな) どうしても黄瀬に対して甘い対応をしてしまうのは、もう諦めている。 素直に応えないのは、せめてもの反抗の証なのかもしれない。 「せいぜい、がんばるのだよ」 「これは譲らないっスよ」 顔を見合わせて笑う。 いつもと同じでいつもと違う帰り道。 二人並んで歩いた。 終わり |
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2012/07/21 |
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帝光中学時代。 |
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