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恋愛未満 |
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影の色濃い昼の木陰。 セミの声が鳴り響く正午過ぎ。 流れる汗は止まる事を知らずにぽたぽたと床を濡らした。 「あっついっスねぇ〜」 Tシャツは汗で色が変わり、タオルはもう2枚目だ。 ドリンクボトルで水分を補給しながら、体育館の出入口から外を見た。 風があるからか、熱気のこもる体育館の中よりはほんの少し涼しく感じる。 だからなのか、休憩になってすぐ、緑間が出ていくのが見えた。 鉄製の扉の外はコンクリートの階段が数段ある。 そこに座っていた緑間の隣りに黄瀬も座った。 「くっつくな」 肩が触れるくらい近づいたら思い切り押しのけられた。 「えー。ちょっと寂しいこと言わないでほしいっスよ」 「暑苦しいのだよ。離れろ」 「いやっス〜」 仕方なく10センチほど離れて、黄瀬は空を見上げた。 青空と白い雲。 真夏の暑さは、異常だ。 「緑間っち、今度ディフェンス教えて」 「断る」 「ちょ、即答って、酷くねっスか?」 「いまさら、何を教える必要があるのだよ」 セミの声がひときわ大きく聞こえる。 暑いな、と遠くで思った。 「だって、オレ、ディフェンス苦手なんスよ」 「知ってる」 「だったら・・・」 「オレが教える事はないのだよ。基礎はできているのだから、自分でなんとかしろ」 「これ以上どうしたらいいのか、わかんないんスよ」 緑間が首にかけたタオルで額の汗を拭く。 どこを見ているのか、その横顔が黄瀬の方を向く事はなかった。 (横顔ばっかり見てる気がする) 瞬きする目を隠すような眼鏡のフレームが邪魔だと思った。 緑間の顔を覗き込んで、そのまま両手でその眼鏡を取り上げる。 「黄瀬っ」 思っていた以上に緑間は油断をしていたらしい。 咎める声は遅れて聞こえた。 簡単に眼鏡を奪えて、黄瀬は少し驚いた。 いつもレンズに隠されていた両目は思った以上にきれいに整っていて、さらに驚く。 深緑色の瞳の視点が定まらず、ゆらゆらと揺れているのに見惚れて、言葉も出ない。 「なにをしてるのだよ。早く返せ」 溜息とともに手を差し出されたけれど、そのまま返したくはなかった。 もっと見ていたいと思ったけれど、緑間の眉間に刻まれた皺がそれを許してはくれないらしい。 (ビー玉みたい) 窓辺に瓶詰された緑色のビー玉は、差し込む光を反射してきらきらと輝いた。 それくらい繊細で艶やかなもののようだった。 黄瀬はそのまま顔を近づけると、緑間にそっと口付けた。 口唇が触れた瞬間、すぐに緑間から離れた。 (いま、オレ、なにした・・・?) 自分で自分の行動がわからなくて、戸惑う。 緑間も状況をよく把握できなかったらしく、無表情のまま固まっていた。 「緑間っち、ごめんっ」 眼鏡を落とさないように緑間の手に握らせて、黄瀬はダッシュでその場から逃げた。 外の水飲み場まで辿り着いて、頭から水をかぶった。 まだ心臓はどきどきしたままで、顔が熱い。 真夏の太陽がじりじりと照りつける。 いろんなものが焦げ付くような暑さの中、黄瀬は思いもよらない感情を抱えて、その場に座り込んだ。 終わり |
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2012/08/07 |
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帝光時代の黄緑の日。 |
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