いちばんぼし

 
     
 


帰り道に空を見上げた。
一番星が光ってた。
ひとつだけ、ぽつんと明るく輝いてる。

好き。
花びらが一枚ひらりと落ちるように。

水面に波紋が広がっていく。
きらきらと反射したきらめき。

「一緒にいたい」

小石を蹴る。
灰色の石はころんころんと転がって、電柱にぶつかって、止まった。

「いるだろう?」

不思議そうな声で、首を傾げる。

「そうだけど、そうじゃなくて」

定まらない、自分の気持ちが、小石のようにころんころんと転がっていく。
想いはひとつだけだけど。

自分達はとても子供で。
まだ、大人の保護が必要で。

ひとりではなにもできなくて。
このまま二人でどこかに逃げてしまいたいのに。

「好き」

隣りに並ぶ人の手を握る。
指先をそっと。

返事のかわりなのか。
それとも。
それとも、なんだろう?

同じ強さで握り返してくるから、嬉しくて、勝手に笑顔になる。
単純だな。
すぐに笑ってしまう。
嬉しくて。

ほんの少しだけ自分より高い視線を見上げる。
深緑色の双眸がこちらを見ていた。
硝子玉のような瞳に何度も見惚れる。

「黄瀬」

低く、甘い声が、名前を呼ぶ。
頭のてっぺんからつまさきまで、ぶわっと何かが走り抜けていく。

その先を待つけれど、続かない。
なんだろう。
なんだろう。

外灯の下を通ると影が長く伸びた。
並んでる二人は、一つに見えた。

「・・・好きなのだよ」

耳に届く、声。
甘くて優しい。

頬から耳まで、一気に熱くなって。
照れくさくて、誤魔化す様に空を見上げれば、輝く星はそのままで。

「なんで、そんなに甘やかすんスか」
「甘やかしたつもりはないが、甘やかされたいのか」
「これ以上は、遠慮するっス」

指先から、きっと、緊張と不安が伝わっているのだろう。

(なんで、わかるんだろう)

自分は何にもわからないのに。

繋いだ手とは反対の手が、ぽんぽんっと二回だけ、頭を撫でるように触れた。
じんわりと、鼻の奥がつんとするから、もう一度空を見上げた。

広がっていく波紋は、きらきらと体中を満たして、心を震わせる。

それは、しあわせと呼ぶ、切なさ。

離れないようにと、握った手に力を込めた。



終わり



 
     
 

2012/09/24

 
     
 

帝光中学時代。2年生。
二人は付き合ってる設定です。
ふわっと思いついた言葉だけを並べて、
短い短いお話を作るのが、
ものすごく好きです。