「緑間っち、雪が降ってるっス!」

手のひらを天に向け、黄瀬が笑う。
緑間はそれに合わせて空を見上げた。
暗い灰色の雲から、白い欠片がひらひらと舞い落ちてくる。
冷たい風が頬を撫でてゆき、吐いた息が白く浮かび上がって消えた。

「寒いわけだな」

乾いた地面の上で、白い欠片は何の痕跡も残さずに融けて消える。
それが繰り返されるうちに景色は白く染まるのだ。

くちゅんっ。

すぐ側で、思いのほかかわいいくしゃみが聞こえる。
それが口の端が緩む程おかしくて、緑間は黄瀬から目を逸らした。

「緑間っち?笑わなくなっていいじゃないっスか!」

黄瀬が鼻水をすすりながら、もこもこの手袋をした手で緑間の濃茶色のコートを着た背中を叩く。

「オマエに似合わないかわいいくしゃみだと思ったのだよ」
「嬉しくないっス」

黄瀬がぷうっと膨らませた頬を緑間は指先でつぶした。
ぶびっと鈍い音が響いて、緑間はさらに笑った。

「もー、なにするんスか!」

ぼふっと柔らかい感触でもう一度背中を叩かれる。
気がつけば、降り続く雪が地面を濡らすほどまでになっていた。
このままやまずに一晩たてば、数センチは積もるだろうか。
黄瀬の濃紺のダッフルコートの肩にも雪が積もり始めていた。
黄色の髪を撫でるように、積もった雪を払って、緑間は歩き出した。

「どこか店に入らないか。このままでは濡れてしまうのだよ」
「そうっスね。腹も減ってきたし・・・」

隣りを歩く黄瀬も手を伸ばして、緑間の髪についた雪を払う。
やわらかな手袋が優しく頭を撫でていく。
穏やかな時間が降る雪のように過ぎる。

くしゅんっ。

今度は緑間がくしゃみをひとつ。
黄瀬が少しだけ目を丸くして、それから、笑った。

「緑間っちのくしゃみは普通っスね」
「あたりまえなのだよ」
「緑間っちは薄着すぎるんスよ。なんで手袋もしてないんスか」
「そんなに寒くな・・・」

言い返す前にもこもこの手袋に右手をぎゅっと握られる。
ふわふわとした感触はぬいぐるみのようだと、緑間は思った。
黄瀬の体温もあるのか、指先が一気に温かくなる。

「あったかいでしょ?」
「・・・そうだな」

髪と肩と足元に積もる雪が、融けて消えた。



終わり



 
     
 

2013/01/05

 
     
 

※2013年初書きの黄緑です。
こんな風に、今年も黄緑を書いていけたらいいなと、
思っております。
黄緑が大好きです。