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キスキスキス |
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黄瀬の部屋で時間を過ごすようになって何度目だろうか。 そんなことをふと思った緑間が読んでいた本から顔を上げると、隣りにいた黄瀬と目が合った。 いつから見ていたのだろう。 黄瀬の視線に気付かないくらい物語に夢中になっていたのか、それともその視線に慣れてしまったのか。 黄瀬、と呼びかける前に頬に唇が触れる。 柔らかな感触と温かな吐息が近い。 それから、目を閉じたのを合図に唇が重なる。 啄ばむだけのキスを繰り返しているうちに押し倒された。 「黄瀬・・・」 「ちょっとだけこうしてていいっスか?」 絨毯の上は冷たくも温かくもない。 ただ、仰向けに寝転んだ身体を抱き締める黄瀬の体温と体重が嫌いではなかった。 黄瀬がそっと手を伸ばし、眼鏡をはずす。 緑間の視界はぼんやりとして、間近の黄瀬の瞳だけがきらきらとして見えた。 顎、首筋、それから、耳朶。 黄瀬は子供のように小さなキスを繰り返す。 キスを返すことはしないかわりに緑間は黄瀬の後頭部に手を伸ばし、優しく撫でた。 黄瀬のさらさらな黄色の髪の感触が緑間は好きだった。 額、瞼、鼻先へと触れ、再び唇に戻る。 理由や原因を考える必要はなかった。 ただ、したいからしているのだ。 それは、黄瀬と付き合うようになってわかったことのひとつだった。 そして、したいようにさせていれば、うるさくもない。 時々、鬱陶しいと思うことはあれど、それは拒絶するほどのものではなかった。 (それでも、今日は、少し、おかしい・・・) 緑間は触れた唇の隙間から、自らの舌を滑り込ませた。 いつもは黄瀬を受け入れるだけだったけれど、たまには積極的になるのも悪くは無い。 驚いて反射的に逃げようとする黄瀬の後頭部を抑えて、歯列を割って、奥へと求めた。 目を閉じれば、すぐに黄瀬は応じるようにその舌を絡める。 触れるだけの甘いキスも全てを食われそうな激しいキスもどちらも嫌いではなかった。 (欲しければ、欲しいと言えばいいのだよ) お互いにお互いだけがあればいいと、今だけはそれが許される。 口内を蹂躙して満足したように離れれば、乱れた呼吸が熱い。 「寂しかったのか?」 口の端に零れた唾液を拭いながら笑うと、赤くした頬を隠すように肩口に顔を埋めてくる。 「緑間っちが楽しそうだったから邪魔したくなかったんスよ」 「オマエは本当にバカなのだよ」 何度となく繰り返すやりとり。 それは好きという気持ちを確かめる為の挨拶のようなものだった。 「知ってるっス」 拗ねたような言い方が思いのほかかわいらしくて、緑間は声を堪えて笑いながら、その頭をもう一度撫でた。 終わり |
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2013/03/24 |
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※ツイッターで最初に発表して、 |
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