好きと言うだけ

 
     
 


「緑間っち、好き」

隣りにいる緑間に寄り添って、ぽつりと呟く。
好きって言うことにどれだけの意味が詰まっているのかなんて、きっと本人にしかわからない。
それが、少しでも伝わればいいと、繰り返すことをやめない。

「そうか」

緑間は読んでいる本から目も離さずに応える。
聞こえているのは間違いない。
自分とは感覚がズレているから、きっと、この好きの意味は半分も届いていないような気がする。
それでもかまわないと思うのは、好きだからだ。

「好き」
「・・・」
「好きっス」

腕に腕を絡めて、体を密着させると、視線だけちらりと向けた。

「・・・知ってる」
「オレ、ほんとに緑間っちのことが好きなんスよ」
「それで?」

その聞き方はとても卑怯だ。
自分の気持ちではなくて、こちらの想いだけを問い質す。
わからないことをわからないままにしないだけ、優しいと言えばいいのか、貪欲と言えばいいのか。
おかげで、言葉にならないものを見せるには都合がいい。

「知って欲しくて言うんスけど、他にどう言っていいかわからなくて、結局好きとしか言えないんス」

好きだから、好き。
なにがとか、どこが、とかではなくて。
ただ、緑間っちが、好き。
それが、伝わればいい。

「言いたいだけ言えばいいのだよ」

諦めてるの?
それとも、喜んでいるの?
どうなの?

「ずっと言うっスよ?」
「しかたないから、聞いててやるのだよ」

ふ、と口元を緩めて、目を細めて、そっと頭を撫でてくる。
それは、無意識なの?
なんなの?
一気に指先から頭のてっぺんまで熱くなるのを知ってるの?

「・・・緑間っちってさぁ」
「なんだ?」

震えながら呼びかければ、首を傾げる。
無意識天然の破壊力は、抜群すぎた。
こちらがどんなに意図して仕掛けても全部をあっさりと吹き飛ばしてしまう。

「すげー好き」

ぎゅうぎゅうに抱き締めて、そのままキスをして。
何度も好きと繰り返した。



終わり



 
     
 

2013/04/11

 
     
 

好きと言う黄瀬くんが好きな緑間くん。
そーゆーのが、好きな私。