not intention

 
     
 


並んで歩く、帰り道。
いつも誘うのは黄瀬で、断らないのは緑間だった。
話すことは、練習のこと、青峰のこと、黒子のこと、紫原のこと、赤司のこと。
お互いのことをめったに話さないことに気がついたのは、黄瀬だった。

「緑間っちの好きな食べものってなに?」
「突然、なんなのだよ」
「じゃあ、得意な教科・・・って、緑間っちは何でも得意そうっスよね」

緑間の答えを待たずに次の質問に移る。

「黄瀬」
「えーと、嫌いなものってあるっスか?」
「ちょっと待て」
「嫌いな食べものは、なさそうっスよね。好き嫌いない感じがするっス」
「ストップなのだよ」

緑間がぱんっと両手を叩いて大きな音を響かせた。
それに驚いて、黄瀬はきょとんっと目を丸くした顔のまま立ち止まる。

「びっくりした〜。なんなんスか」
「なんなのかは、オレが聞きたいのだよ。オマエは、オレに質問しているのか、そうでないのか、はっきりしろ」
「え?質問したら答えてくれるんスか?」
「・・・答えないのだよ」
「ほらぁ〜、だから、聞かなかったんスよ」
「オレのことを気にする前に自分のことを話せ」

ぷいっと黄瀬から目を逸らして、緑間が言う。

「緑間っち、オレのこと聞きたいんスか?」

興味すらもたれてないと思っていただけに、黄瀬は緑間のこの反応を意外に思った。

「・・・・・・。やっぱり聞かなくていいのだよ」
「そんな、遠慮しなくていいんスよ?」
「うるさい」
「緑間っちが言い出したんスからね?」

顔を逸らした緑間を下から覗き込んで、黄瀬が笑う。
不機嫌と照れが混ざったような複雑な表情をしている緑間が珍しくて、そんな顔が見れてラッキーとも思った。

「オレ、好きなものってあんまりないんスよ。夢中になれるものもなかったし、毎日つまんなくて。でも、バスケ始めたらオレより強いヤツがいて、敵わないのが悔しくて、おもしろくて。だから、バスケは好きっス」

黄瀬は緑間の右手を掴んで、ぎゅっと握った。

「な、なにをするのだよ」
「やっとオレのこと見た」
「なんなのだよ」
「オレ、緑間っちのことも好きっスよ」

目を合わせて、真っ直ぐに見詰めて、それから、笑おうとしたけれど、いつものように笑えなかった。
もっと自然に、もっと軽く、冗談みたいに言おうとしたのに、思っていたよりもうまくいかなかった。
握った指先が、震えている。
緑間は驚いたように目を見開いて、沈黙した。
何か、何か言って、この空気を冗談にしなければと、焦れば焦るほど、なにも思い浮かばなかった。
ただ、バカみたいに緑間の目に映る黄色の光に見惚れた。
それは、緑間が見ているのは自分だけだという証拠だった。

「・・・嫌われるよりマシなのだよ」

溜息と共に吐き出された言葉に反射的に声を荒げてしまう。

「嫌うわけないじゃないっスか!」

好きなのに。
少しも自分の気持ちは伝わっていなかったのだろうか。
いままでもずっと。

「・・・そうか」
「そうっスよ」

行き場のない苛立ちをどうにか抑えて、黄瀬は深呼吸をひとつ。
そうしてる間に、掴んでいた手を緑間からぎゅっと握り返された。

「緑間っち・・・?」

心拍数がどんどん上がっていくのが自分でもわかる。

「どうしてオマエに好かれているのかよくわからないが、せっかくの好意を否定することはしないのだよ」
「好きでいていいってことっスか?」
「嫌わないのだろう?」
「もちろんっス」

緑間とちゃんと手を繋ぎ直して、黄瀬はほっとした。
恋愛感情に鈍いとは思っていたけれど、やっぱり自分の意図した気持ちはきっとほとんど通じていない。
それでも、握り返してくれた分、諦めなくていいと自信もついた。

「緑間っち」

振り解かれない手の温もりが始まり。

「オレ、諦めないっスよ」

好戦的な光をその目に宿し、黄瀬は緑間の手を引いて歩き出した。

「おい、黄瀬、手を放せ」
「嫌っスよ」

二人きりの帰り道。
並んで歩く影が、長く伸びて重なった。



終わり




 
     
 

2013/06/03

 
     
 

※こんなつもりじゃなかった。
黒バスで黄緑を初めて書いた日から、
一年がたちました。
一度ハマると長いんですが、
黄緑とも長いお付き合いができたらいいなぁと思ってます。