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黄瀬の部屋が、いつでもほどほどに整頓されているのは、時々緑間がやってくるようになってからだ。 この部屋で一緒に過ごすときは、いつも隣り合わせに座る。 ソファがあるのに、ベッドを背にして、ラグマットの上で足を伸ばす。 借りてきたDVDは、アクション映画で、テレビの向こうで激しい爆発音が響いている。 真剣に見ているのか、緑間の口数はいつも以上に少ない。 そっと横顔を伺い見れば、眼鏡にオレンジ色の炎が映っていた。 真剣な眼差しは、真っ直ぐにテレビに向いている。 選ぶ映画について、特に指摘をしない。 お互いに好きなものを選んで、見たければ見るし、見なくてもいい。 興味のある対象があまり重ならないから、いつのまにかそうなっていた。 無理をするのは、良くない。 この部屋にいる時は、居心地が好くないと、息が詰まってしまう。 二人しかいないのにそれでは、つまらない。 気を遣わないというのは無関心ではなく、お互いが譲り合うことのようだ。 たった数時間だけど、一緒にいる間はうまくいってると、黄瀬は思う。 緑間もそうだといい。 いつかの未来。 こんな風にずっと一緒に暮らせる日が来ると信じているから、その日までの予行演習なのかもしれない。 特別なことは、何もなくて、ただ、一緒にいる時間を楽しもうとする。 「緑間っち」 呼べば視線が向く。 どうした?って、言われなくてもわかる。 真剣に見てるのに、じゃましてごめんねって言えなくて10センチの距離を5センチに詰めた。 ぽんって、後ろ頭を優しく撫でられて、それはさすがに予想外で、驚く。 緑間の視線は再びテレビに向かったけれど、手のひらはしばらく黄瀬の頭にあった。 (今見てる映画が終わったら、キスをしよう。それから、緑間っちの頭を撫でよう) 甘やかされたいわけじゃないのに、悔しいけれど、気持ちいいと思ってしまう。 同じくらい、甘やかしたいって、どうすれば伝わるんだろう? そんなことを考えているうちに映画はどんどん先に進んで、気がついたら主人公がぼろぼろになっていた。 それでも、負けない。 クライマックスに近づく映画を一緒に見ながら、このDVDを選んだのは自分だったと思い出す。 気が合う部分を見つけたみたいで、嬉しい。 少しずつ、形の違うパズルのピースが当てはまるみたいに、好きなものを探していこう。 時間はまだたくさんあるのだから。 終わり |
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2013/06/20 |
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※黄瀬くんの部屋で過ごす緑間くんの話。 |
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