短い話1

 
     
 


「ねぇ、お願いがあるんスけど?」

黄瀬は言う。
読んでいる本から目を放さずにいる緑間に構わず、話を続ける。
随分慣れたと、自分でも思う。
相手にされていないようで、ちゃんと聞いていてくれる。

「愛してるって言って?」

流石にその『お願い』が、聞き捨てならなかったのか、緑間が顔をあげた。
すぐ側にいたから、至近距離で目が合う。

「愛してる」

まるで、寸劇の脚本を読むかのような、棒読みなセリフに黄瀬は堪え切れずに声をあげて笑い出した。

「バカめ」

呆れたようにため息ひとつ。
右手で眼鏡を押し上げて、緑間は再び視線を膝上の本に落とした。

「慣れたっスね」

ぽすん、と緑間の肩に頭をのせて黄瀬はまだ笑っている。

「誰のせいなのだよ」
「オレ?」
「……違うかもな」
「え?ちょっと、それはないっスよね?」

慌てて顔を覗き込めば、ほんの少し微笑う顔がある。

「オマエ以外に誰もいないのだよ」
「ほんとにいー性格になったっスね」

見つめ合って、キスをした。



終わり



 
     
 

2013/08/12

 
     
 

※携帯で書いた、短い話。
これくらいの長さなら、いつでもどこでも書ける。