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図書室 |
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「緑間君にこわいものはありますか?」 図書室の片隅。利用者の少ない中、目の前に座った黒子を緑間は一瞥もしなかった。 気配に気付かれないとつまらないと思い、わざとイスの音を響かせたというのに緑間は眉ひとつ動かさない。 手元の本に集中しているのか、その目は真剣に活字を追いかけている。 もちろん、それを邪魔するために声を掛けたのだけれど、どうやら無駄のようだった。 いつか気付いてもらえるだろうかと、黒子は本を読む緑間を頬杖をついて眺めた。 部活の時よりも穏やかな表情なのは、眉間に皺が寄っていないからだと気付く。 どんな物語を読んでいるのかわからなかったが、緑間の部活とは異なる雰囲気は、心地好かった。 「・・・怖いものだらけなのだよ」 届いていなかったと思った問いかけは、数分の時差を経て、返ってきた。 聞いてなかったわけではなかったのか。 区切りのよい場所まで待たせるあたり、本当にマイペースな人だと黒子は思った。 「例えば?」 「シュートが落ちること」 あまりにもあっさりと答えるので、黒子は驚いてしまった。 ほんの少し、動揺を瞳に映したまま緑間を見ると、驚かれたことに驚いたらしく、何度か瞬きを繰り返す。 「何故、オマエが驚くのだよ」 「まさか、バスケのことだとは思わなかったので」 そして、素直に答えてもらえるとは思わなかったので。 黒子は、この近寄りがたい人が、実のところひどく優しい人であることを知っている。 「怖いものと知っているから、怖いと思わないようにしているのだよ」 それ以上、話しかけるなとでも言いたげに、緑間は黒子から視線をはずして、再び手元の本へと集中を始めた。 眼鏡の隙間から見える目元の長い睫毛が、瞬きするたびに揺れて、きれいだと思った。 普段、なかなか自分と同じ目の高さになることのない緑間を正面から眺めるのが好きだった。 図書室で見かけるたびに、目の前に座る。 それを緑間に咎められたこともなければ、嫌がられたこともない。 (少しは、自惚れてもいいですか?) 聞けない問いを飲み込んで、黒子も本を開いた。 静かな二人だけの時間が穏やかに過ぎていく。 終わり |
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2013/04/01 |
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ももしさんに捧げた一品。 |
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