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点数 |
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同じ部屋にいても隣りに並ぶことは少ない。 向かい合わせになることはある。 今だってそうだ。 問題集を広げたテーブルを挟んで、静かに、ただ、静かにそこにいるから、話すこともない。 時折顔を上げて、こちらの様子を確認する時を狙って、キスをする。 話さなくてもいい空気が、気まずさから居心地の好さに変化したのはいつからだろう。 言葉は上手くない。 (こいつはこんなにも無口だったのか・・・?) 付き合い始めたのは、一ヶ月前。 なにが、どこが、きっかけだったのか、よく覚えていない。 ただ、この図体ばかりでかい男の顔がやけに脳裏に焼き付いて、消えなかった。 好きだと思う前に口付けたら、なんだか、腑に落ちた。 驚いた顔をしていたけれど、拒絶はされなかった。 それから、なんとなく、付き合うか?という話をした。 付き合うとは?と、さらに不可解な表情をした緑間にひとつずつ説明するのは面倒だった。 いろんなものを全部省いて、一緒にいたい時に一緒にいることだと言ったら納得したようだったが、よくわからない。 それでも我を貫く男がそのまま頷いたのだから、少なくとも嫌われてはいないらしい。 「緑間」 呼べば条件反射的に顔を上げる。 真っ直ぐに見詰める目が、次の言葉を待っているのがわかる。 「俺のこと、好きか?」 「人として、尊敬してます」 眼鏡の奥の深緑色をした瞳がゆらゆらと瞬きを繰り返す。 「お前は俺の何を知ってる?」 テーピングの巻かれた左手首を掴んで、その指先にキスをする。 「バスケが好きで、真面目で、成績が良くて、時々怖いです」 「・・・最後!」 「先輩の怒鳴り声が煩いと思った事もありますが、今は無いと寂しいです」 表情を変えずに、淡々と答える緑間に嘘は何もなくて、ただそれをどう受け止めたらいいのか、頭を抱えた。 掴んだ手首を放して、それから、指を絡めるように手を繋ぐ。 この乾いたテーピングで巻かれた、長くて骨ばった指から、あの見惚れるほど容赦のないシュートが放たれるのだ。 「50点」 この一ヶ月、同じ質問に対する緑間の答えに適当に点数をつけている。 その方がわかりやすいのか、日々答えが変わっておもしろいし、いろんな本音を引き出せる。 嘘を言わない不器用さが、少しずつ素直な反応を見せるようになっていく過程が愛しいとも思う。 「その評価は厳しくないですか?」 「だいぶマシになったって褒めてんだろーが」 「そんな宮地さんが好きです」 「簡単に本音を付け足すな。轢くぞ」 「照れたんですか?」 「マジで、ムカつく」 繋いだ手を引き寄せて、そのまま噛みつくように唇を塞いだ。 無口な男は、話し出すと止まらないらしい。 未だ、知らないことばかりだけれど、その方がいい。 最近気付いたのは、キスをされるとわかれば目を閉じるようになったことだ。 (優秀すぎだろ・・・?) 少しずつ、少しずつ。 浸食して、変化させていくのも悪くない。 この手を離せなくなったのはどちらが先か。 繋いだ手をぎゅうぎゅうと握り合って、ただ貪るように何度も口付けを交わした。 終わり |
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2013/03/15 |
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