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ねじ |
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手を伸ばした。 そこに居た。 だから、キスをした。 「それ、おかしくないですか?」 目の前の緑色の髪と緑色の目をしたかわいくないヤツが真面目な顔で言う。 「どこが?」 眼鏡をはずせば、長い睫毛がぱちぱちと瞬きするのがどうにもかわいい。 付け睫毛をせずともこんなにキレイなのだから、世の女共はコイツの睫毛を羨むに違いない。 そんな長い睫毛に違和感のないキレイな顔立ちをしているから、最初から、きっと、この顔が好きなタイプのひとつなのだと納得をする。 理想と現実が異なることは身をもって体感しているが、現実に理想があれば、文句だってない。 「貴方は手を伸ばした先に誰かが居れば、ところかまわずキスをするんですか?」 「誰かじゃねえよ、お前がいたんだろーが」 「え?」 「え?じゃねえっつーの。お前だからキスしたんだろ?なんで、お前以外の誰かとキスしなきゃなんねえんだよ。轢くぞ」 何度言っても納得をしないのは、何が原因か。 好きだとも愛してるとも繰り返すけれど、どうにも自覚していないのが見て取れる。 おかしいのは、お前だ。 「お前は、俺とキスしたくねぇの?」 そんなわけはない。 そうであれば、キスなんかしない。 意地の悪い質問をしたところで、わかるのは、緑間が俺を好きだということだけだ。 じわじわと言葉の意味をかみ砕いて理解したのか、瞬きの数が増える。 「したくなかったらさせません」 「だよな」 なんて面倒くさい男なのだと、もう何百回も思っているというのに、その面倒くさいところが嫌いじゃないのだから、俺も大概おかしいのだ。 だから、きっと、ちょうどいい。 顔を近付ければ、反射的に目を閉じるから、本当はキスされるのも好きなんだろ? 言わないけど。 唇を重ねた瞬間、睫毛が震えるから、それを見るのが好きで、だから、キスをするのかもしれない。 「宮地さん」 間近で見詰め合えば、透き通るような目を向けて、呼ぶ。 低めの甘い、その声も嫌いじゃない。 そもそも嫌いなところなんて、一つもないのだから、本当に仕方がない。 本当に睫毛、長いな。 そんなことをぼんやり思っているうちに、触れるだけのキスをされる。 「……、お前さぁ」 「したいと思ったので、しました」 真面目な顔でそう言い切るから、心底バカだと思わざるを得ない。 たぶん。 ちょっとおかしいくらいが、いいのだろう。 ねじがひとつ、ふたつぶっとんだレベルのバカでいい。 「生意気…」 我慢できずに笑えば、居心地悪そうにぷいっと顔を逸らす。 そーゆーとこも好きなんだって言えば、お前は信じるか? 終わり |
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2013/07/30 |
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