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高校紫緑の日 |
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「みどちん、ひさしぶり」 IHが終わって、秋田に戻る日にちを遅くして、時間を作った。 帝光中学の最寄り駅近くの公園にメールで呼び出したら、本当にすぐにやってきた緑間が、うれしいと思った。 「オマエはいつも突然すぎる」 半袖のTシャツとジーンズ。 眼鏡と緑色の瞳。 「でも来てくれたし」 額に汗が滲んでいるのは、急いでくれた証拠だ。 紫原はうれしくて、そのまま額にキスをする。 「バカものっ」 べしっとあごのあたりを叩かれたけれど、紫原はそのまま緑間を抱き締めた。 東京の夏は暑くて、ただ立っているだけで汗が流れるほどの気温だ。 それでも、腕の中に緑間をおさめておきたくて、ぎゅううっと背中に回した腕に力を込める。 蝉の声と、それから汗ばんだシャツの湿った感触と、じんわりと伝わる体温を忘れないように。 周りに誰もいないからか、緑間はおとなしく腕の中にいてくれた。 「ねーえー、みどちん」 額から、首筋から、汗が滴となって零れ落ちる。 「オレがいなくて、寂しかった?」 「・・・・・・。そうだな」 静かに答えた緑間の顔は自分の身体に隠れて見えない。 (もったいない・・・) でも離れたくなくて、そのまま緑間を抱き締め続けた。 「紫原」 名前を呼ばれて下を向く。 「暑い・・・のだよ」 良く見れば、汗だくの緑間が困ったように自分を見上げている。 「あー、うん。そうだね。アイス買いに行こうか」 緑間のテーピングされた方の手を握って、紫原はそっと離れた。 触れ合っていた場所が、少しひんやりとする。 「手を、放すのだよ」 「いやだし」 「このままコンビ二に行く気か」 「そーだよー?」 まだぶつぶつと文句を言い続ける緑間を引っ張るように歩き出した。 力もなにもかも、自分に敵わない。 だけど、自分よりずっと強い。 (欲しいなー・・・) 緑色の、きらきらしたビー玉のような目が。 自分だけを見てくれたら、いいのに。 アイスを買って、また公園に戻ってきて、ベンチに並んで座ってアイスを食べる。 蝉の声しか聞こえない。 8月の暑い日。 汗をぽたぽたと零しながら、食べたソーダ味のアイスは、いつもよりおいしかった。 「みどちん、好きだよ」 キスをしたら、ソーダ味がした。 「みどちんは?オレのこと好き?」 「嫌いだったら一緒にいないし、キスもしない」 「知ってるよ。だから、言って?」 わがままじゃない。 数ヶ月ぶりに会えた。 (ご褒美?) 間近で見つめる綺麗な綺麗な緑色。 「・・・・・・。す、き、・・・」 たった二文字の言葉を言うだけで、真っ赤になってしまうから。 (かーわいーい) 赤くなった耳に唇を落として。 それから、噛み付くようにもう一度キスをした。 (ソーダ味のみどちん。全部オレのだったらいいのに) 蝉の声がひと際大きく聞こえた。 終わり |
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2012/09/06 |
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高校の紫緑の日。 |
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