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帝光紫緑の日 |
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菓子を食べるな。 食べこぼすな。 箸の持ち方を直せ。 思い出せば、緑間はいつだって、小言を言う。 紫原はそれをうるさいと感じつつも、うれしいと思う。 (だって、俺のこと見ていてくれてる証拠だし) 緑間は真面目だと、紫原は思う。 他人のことばかり気にして、自分のことは人事を尽くすと言い張って、とにかくなんにでも真剣に向き合う。 真っ直ぐに伸びた背筋も真っ直ぐな視線もがちがちに固まっているように見える。 もっと、ゆるりと生きればいいのにと思う。 めんどくさいことをめんどくさいと言うだけでも気楽になるのではないか。 それを一度言ったことがある。 「みどちん、そうやって生きててつかれないの?」 「・・・オマエがそうやって生きてて疲れないように、疲れることはないのだよ。むしろ、これを変えろと言われる方が困る」 それもそうだと、紫原は納得する。 緑間は賢い。 そして、きっと、優しい。 どんな質問にもちゃんと答えようとする。 答えがなくてもきっと答えを探そうとする。 無視をするという選択肢が、緑間の中にはないのかもしれない。 (もっと自分のことも大事にすればいいのに) 緑間を背後からそっと抱き締める。 重い、うざい、暑いと言うわりに、突き放したりはしてこない。 (ねえねえ、そんな風に油断してると、俺が食べちゃうよ?) 緑間はいつも甘い香りがする。 舐めたら、齧ったら、おいしいのかもしれないと、紫原は常々思う。 身長の割には薄い体をぎゅうぎゅうと抱き締めたまま、綺麗に刈り揃えられた髪が揺れた先に覗く耳を舌先で舐めた。 「紫原っ!」 さすがに驚いた緑間が声を荒げたけれど、紫原は腕の中から逃がさなかった。 (甘くはないけど・・・) 緑間の柔らかい耳が真っ赤に染まった。 まるでイチゴ味の飴玉みたいだと、紫原は思う。 もう一度、その耳を舐めたら、びくりと緑間が肩を竦める。 (かわいい) びくびくと震える様子が珍しくて、紫原は飴玉を舐めるように、何度か緑間の耳を舌でなぞり、耳朶に甘く噛み付いた。 「紫原っ、や、め・・・っ」 腕の中でもがく緑間をさらにきつく抱いて、その首筋にもちゅっと唇で触れた。 甘くはないけれど、心臓がどきどきする。 「みどちん、俺、みどちんのこと、好き」 耳元で囁いたら、頬から耳から首筋まで、ますます真っ赤になっていく。 「好き」 今、どんな顔をしているのだろう? 真っ赤になって、怒っているのかな。 後ろからだとなんにも見えないけれど、わかることもあるよ。 みどちんの心臓も俺と同じくらいどきどきしてるね。 同じ気持ちなのかな。 終わり |
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2013/05/07 |
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帝光紫緑の日☆ |
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