172Qネタバレ

 
     
 


メールをした。
本当は、ずっとためらっていた。
隠せるなら、隠し通しておきたかった。

(尊敬してるから・・・)

だから、こそ。
見せたくなかった。
見て欲しかった。
相反する二つの感情は、いつだって、答えはない。

長い間、その背中を見ていた。
沈む膝、真っ直ぐに伸びた両腕。
全身をバネのように使って、高く、遠くまでボールを放つ。
何度も何度も模倣した。
けれど、同じプレーはできなかった。
センターラインから、同じ動作でシュートを放ってもボールはゴールに届かずに落ちる。
尊敬しているからこそ、真似したかった。
同じプレーをしてみたかった。

(そうすれば、緑間っちが何を考えているのかわかると思ってた・・・)

独りでいようとする人を理解すれば、寄り添えると信じていた。
同じシュートが打てれば、側に近づけると思っていた。


青峰の模倣を成功させた時にコツを掴んだのかもしれない。
憧れを捨て、身の丈に合った形に変化させる事で、出来ないと思い込んでいたプレーも模倣できると知ったからだ。
ただ、どんなに自分に合わせても、実力以上のプレーは、身体への負担が大き過ぎた。
練習さえも時間の制限が必要だった。

それでも。
手に入れたかった。

憧れと敬意、それから、全てを超えたいという欲求。
それは、恋愛にも似ている。

「何も知らないまま好きだなんて言いたくないんスよ」

遠くからゴールを真っ直ぐに狙った時の気持ち。
落ちないという自信。
それをキープする為の努力。
たった独りでどれだけの壁を乗り越えてきたのだろう。

(ねえ、緑間っち、知ってる?オレ・・・)

携帯電話を握り締めて、両手を天に伸ばした。
遠く届かない空とは違う。

ほんの少しだけ、自分用にアレンジをした。
身体能力的に何度も打つことは無理だけれど。

『オレ、3Pシュート、できたっス』

これだけで、きっと、緑間には伝わるような気がした。

(悔しいって、思う?)

ずっと自分が抱えていた気持ちが、ばれてしまうかもしれない。
隠し通す事なんて、できなかった。

不安と心配と恐怖。
信じていたいけれど、信じ切れない自分が嫌だった。

(嫌われるなんて、思ってもない)

自分に言い聞かせる。
心が狭いのは自分だ。

怒る?泣く?笑う?

緊張で震える指先を握り締めた。
どんな反応をされるのか、想像もできない。
怖いと感じるのは、本当に好きだからだ。


緑間からは、思っていたよりも早く返事が来た。
目を閉じて、それから意を決してメールを読んだ。

『オマエができる事は想定内だ。バカめ』

自分の力を緑間に認められていた事を思い知る。
そして、それは模倣されても揺るがない自信の表れにほかならない。

(緑間っち、かっこよすぎるっス・・・)

携帯電話を握り締めて、その場に突っ伏した。
嬉しくて、笑ってしまう。

(優しくて強い)

真っ直ぐに伸びた背中を思い出して、今すぐ抱き締めたくなる。
その強さが愛しくて、その優しさが好きだ。

「緑間っちの3Pが打てたって、それだけで勝てるわけじゃないっスよね・・・」

強くなりたいと思う気持ちと連動して、出来る事が増えていく。
ただ、それをフルで活用できてはいない。

熱望、渇望、切望。
望むだけでは足りない。
だから。

(オレ、緑間っちが好きっスよ?)

イメージの中の緑間と自分を重ねて、センターラインからシュートを放った。
高く美しい弧を描いたボールは、音もなくゴールに吸い込まれていった。



終わり



 
     
 

2012/07/09

 
     
 

黄緑。
じゃんぷ本誌を読んで、
勢いだけで書いた話。
きみどりいいいいいいいいっ!!!!
って、思いました。