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178Qネタバレ |
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『赤司に勝つ』 珍しく緑間からメールが届いた。 準決勝の試合の前日だった。 きっと、誰にも言えなくて、だけど、誰かに言いたかったのだろう。 その相手に選んでくれたことを素直に嬉しいと思い、そして、酷いと思う。 (こんなギリギリに甘えられても応えられないってわかってるくせに) どんな言葉を贈れというのか。 最強で最高の、帝光中学の主将だった。 無敵で無敗。 敗北を知らない、勝者。 勝つ事は呼吸と同じだと言う。 では、何故、戦い続けるのだろう? そんな相手に勝ちたいと願う気持ちはわかる。 相手が強ければ強い程、挑みたくなる気持ちもわかる。 けれど、赤司を攻略するのは至難だ。 現時点では、自分達も対戦する可能性がある。 目の前のその先を見るのは避けたかったけれど、そうもいかない。 ベスト4。 残っているのは4校だ。 (赤司っちには悪いけど、オレは緑間っちを・・・) 応援したい。 けれど、自分も目の前の試合がある。 戦って、勝たねばならない相手がいる。 (応援を求めてるわけじゃないんだ) それくらいは、わかる。 緑間の決意とそれから・・・。 「オレにプレッシャーめっちゃかけてくるんスから、ほんと、意地が悪いっスよ・・・」 たった五文字だけれど、その奥に見えるのは「負けるな」という想いだ。 (かっこいいっスね) 緑間に身長は敵わないけれど、体格は勝っている。 ポジションの差なのかもしれないけれど、抱き締めれば、見た目よりも薄い。 その細い腰も繊細な指先もなにもかも。 知っているけれど、知らないことばかりだ。 その背中に背負っているのは、自分の事で精一杯だからこその重圧。 断言をする程の決意。 相手のその力を知っていても戦うからには勝つしかない。 勝つ為に戦うのだから。 (負ける為に強くなるわけじゃない) 厳しい練習を重ねても。 ひとつのミスで全て無に返る事をしっている。 一秒、二秒の差。 (赤司っちは、そこが、強すぎるから・・・) 赤司の強さは緑間が一番良く知っているだろう。 ずっと間近にいた。 ぶれないように。 揺ぎ無い覚悟。 (オレはそこまで強くなれるだろうか) その強さを知っている相手を前に勝つと決める事ができるだろうか。 海常の相手は、誠凛だ。 敵は黒子であり、火神である。 知らない相手ではないし、何度も試合は見ていた。 (でも緑間っちは、今の赤司っちを知らない) この八ヶ月で随分と成長したと自負できる。 けれど、同じくらい、もしくはそれ以上に強さに磨きをかけてきている事も容易に想像できた。 (緑間っち・・・) 祈るように携帯電話の画面に口唇を落とす。 (オレが信じてる) 勝つと断言した強さを。 その勝利を。 だから。 「オレも負けないっス」 返信をする。 同じ想いを共有するように。 『オレも勝つっス』 *** 熱気の溢れる会場に入ると大きな歓声に沸いていた。 それだけで、どれほど高レベルな試合の内容だったかが伝わる。 洛山と秀徳の試合は、第二Qが終わって、同点。 動きが鈍いのも均衡を保っているのも一目でわかった。 「・・・調子わるくないみたいっスね」 すれ違った緑間は目を合わせてこなかった。 赤司がまだ本気ではないと言う。 こうなる事は、ある程度予測していたに違いない。 緑間から零れる緊張感に、ほんの少しだけ心配をする。 それでも。 (信じるって決めてるんスよ) 伝わらなくてもいい。 心の奥でぽんっと緑間の背中を叩いた。 背負うものがほんの少しでも軽くなるように。 だから。 決勝で。 終わり |
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2012/08/27 |
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黄緑。 |
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