Signs of the Kiss

 
  ※優音様のリクエスト  
     
 


付き合い始めた頃、黄瀬がひとつの決まりごとを作った。

『キスしたいとき、手を握るから、オッケーだったら握り返して?』


***


それ以来、ずっと、二人きりになったときを見計らって、黄瀬は空いた手を握るように触れてくる。
人目の無い場所であれば、いつだって緑間はその手を握り返した。
唇が触れるのは、少し、気恥ずかしかったけれど、嫌いではなかったからだ。

「緑間っち」

帰り道、並んで歩いている途中で黄瀬がそっと手を繋いできた。
夕暮れの街角に人の気配は無い。
握り返すことに少しためらっていると、黄瀬が少し強めに握ってくる。

「黄瀬」
「誰も見てないっスよ?」

笑う顔が近付いてくるから、仕方なく目を閉じる。
間近に触れそうなくらいの顔を見るのは、少し照れくさい。
そっと重なるる、柔らかい感触。
今、一番近くにいるのは、黄瀬だった。

繰り返される決まりごと。
いつしか、手を握り返すたびに目を閉じてしまうようになったのを黄瀬が笑った。


***


手を握って、握り返してくれたらキスをする。
そんな約束をしたのは、キスをしたいと声にした時、嫌だと言われたくなかったからだ。
おさない子供向けのお遊びだった。
それでも、緑間は律儀にその約束を守ってくれた。

手を握る。
握り返される。
顔を近づければ、反射的に目を閉じる。

(なんて、かわいらしいのだろう)

閉じた目の長い睫毛に見惚れて、最初の目的を見失う。
このまま時を止めて閉じ込めることができたらいいのに。

「黄瀬?」

なかなかキスをしない黄瀬を訝しがって、緑間が目を開けた。
その瞬間、唇を奪う。
驚いたように見開いた目が間近で震えるから、かわりに目を閉じてみる。
暗い世界で、触れ合う唇は、ただ柔らくてあたたかい。

(本当はこれだけじゃ足りない)

少しずつ近づいて、それから、全部手にするつもり。
だから、今日もまた手を握って、目を閉じる緑間のきれいな顔に見惚れるのだ。



終わり



 
     
 

2013/03/15

 
     
 

※ついったーでお話してたときに、
黄瀬くんに手を繋がれるとキスをされると思って、
目を瞑ってしまう緑間くんで盛り上がって、
ネタを提供してくれた優音さんに許可をいただいて、
書かせていただいたものです。