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| 緑間誕生日カウントダウン☆ | ||
誕生日おめでとう! |
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「今日は絶対会いたいっス」 黄瀬は、一ヶ月くらい前からずっと繰り返していた。 緑間からうんざりしたような視線を受ける事にも耐え続けた。 せっかくの土曜日。 練習が丸一日あっても翌日は日曜日。 いつもより長い時間一緒に居る事ができるから。 練習試合が入らない事を願いながら過ごした日々は、メールをことごく無視された日数である。 当日、練習の終わる予定の夕方。 約束の時間より少し前から、黄瀬は秀徳高校の校門の前で緑間を待ち構えていた。 黄瀬の姿に気付いた部活帰りの女子生徒達がわらわらと近寄って来る。 どうしたの?なにしてるの?という質問に約束があるからと笑って追い返す。 優しくできないのは余裕がないせいだ。 ようやく女子生徒の姿がなくなった頃に緑間がやってきた。 白いシャツに黒いズボンの夏服は、何度見ても見慣れない。 (ネクタイがないから・・・?) 襟元の開いたシャツだけの姿は、いつもよりずっと無防備だからだろうか。 「会いにきたっスよ」と手を振ったら、本当に本当に心の底から『なにしてんのコイツ』的な表情で見下ろされた。 (えええええっ?) だって、約束した・・・のに? 浮かれてた気持ちがさすがにぺしょんっと、潰れたような気がした。 「オマエは本当にバカなのだよ」 溜息と一緒に吐き出した言葉の後で、緑間が微笑う。 会って早々緑間の笑顔が見られるなんて、珍しい事もあるのだと、黄瀬は目を丸くする。 「緑間っち、ひどいっスよ〜。オレ、ちょー楽しみにしてたんスから」 一瞬にして、潰れたテンションが回復する。 単純だなと自覚しつつも、本気と冗談の境目がまだ良くわかっていない自分を残念にも思う。 「うるさい。少し離れて歩け」 「いやっス」 緑間の右腕を掴んで、強引に隣りに並ぶ。 7月7日の0時丁度を狙ってメールは送った。 寝ているとは思っていたので、返信がなくともかまわなかった。 誰よりも先に言いたかったのは、ただの自己満足だけれど、どんな顔をしてメールを読んでくれたのかは見てみたかった。 「誕生日おめでとうっス」 直接言いたくて我がままを押し通した。 今日この日に生まれていなかったら、自分の好きになった緑間は居なかったかもしれない。 そう思ったら、生まれた日に感謝をしたくなったのだ。 「・・・・・・ありがとうなのだよ」 隣りを見ると少し照れたような顔をしているのが嬉しくて、思わず抱きしめようとしたら全力で拒否られる。 「緑間っちのケチ〜」 「往来でくっつくな、バカもの」 「じゃあ、オレの家に来てほしいっス」 これもずっと繰り返してきた我がままだ。 会いたいと同じくらい何度も誘った。 緑間には多少強引だと思うくらいにしつこくした方が効果はある。 「ケーキ買ってろうそく立てて、緑間っちが生まれた日をお祝いしたいんスよ」 真剣に訴えたら、緑間が驚いたように目を丸くして立ち止まった。 黄瀬はあたりをぐるっと見渡して、近くに誰も居ない事を確認すると、緑間の両手を握り締めた。 真剣な顔で緑間と真っ直ぐに目を合わせるとその勢いに圧されたのか、緑間も黙って目を合わせた。 「オレは緑間っちが一番好きっス」 触れるだけの口付けをして、笑う。 ずっと言いたかった。 ずっと言い続けていた。 視線がぶれないまま、表情の変わらない緑間からは感情は読み取れない。 (や、りすぎ・・・た?) そんな事はないはずだったが、少し不安になる。 それがそのまま顔に出てしまったのか、緑間の口の端が緩む 「心配するな。オレもオマエが好きなのだよ」 「緑間っち・・・っ!」 両手を広げて包み込むように緑間を抱き締めた。 それはずっと聞きたくて聞けなくて、ずっと欲しくて欲しくてたまらなかった言葉。 まさか、今日この日に聞けるとは思ってもいなかった。 「こ、こら、黄瀬・・・っ」 緑間が咎める声をあげたけれど拒む事はしなかった。 サプライズなんて考えてなかったけれど、サプライズを仕掛けられた気分だ。 「なんで、緑間っちの誕生日でオレがこんなに幸せにしてもらってるんスか。ずるいっス」 肩口に顔を埋めるとぽんぽんと優しく背中を叩かれた。 暖かくて優しくて、少しだけ涙腺が緩む。 人は、嬉しくても涙が零れるのだと知る。 「子供じゃないっス」 「そうだな」 耳元で微かに笑う声。 (好きすぎて死にそう。死なないけど) シャツ一枚ごしの緑間の身体は、その見た目と同様に羨ましいくらいバランスのいい筋肉がついている。 背中を撫でたらくすぐったそうに身じろいだ。 肩甲骨から下にかけて手を滑らし、そっと腰を抱くと思っていたよりも細い事がわかる。 骨格はまだ成長途中なのだから、なんら不思議な事ではないけれど、それは黄瀬の欲求を刺激するのに十分な事実だった。 「緑間っち、今すぐ続きがしたいから早く帰るっスよ」 込み上げる熱を我慢できずに離れたら、緑間に額をばしっと叩かれた。 「ケーキを買うのだろう?」 「もちろんっス。あ、プレゼントはオレとかじゃないっスからね」 「期待はしていないのだよ」 「あ、人気モデルの収入なめてもらっちゃ困るっス」 「高価なものなら受け取らないのだよ」 「そう言うと思ったっス」 だから、年相応で、緑間が受け取ってくれそうなものを探したのだ。 黄瀬が上着のポケットから取り出したのは、緑色の磁気ネックレスだった。 「よくマラソンの選手とかしてるじゃないっスか。これ、集中力が向上するタイプだって聞いたんス。緑間っちにぴったりだと思って」 シュート練習する時にしてみて欲しいと緑間の首にかけた。 緑色にするか黄色にするかで迷って、結局緑色にしたのは、黄色を拒まれたら立ち直れないと思ったからだ。 「ありがとう」 気恥ずかしそうに自分の首元を見る緑間に満足する。 「似合うっスよ」 そう言って黄瀬が先に歩き出す。 本当は鎖だ。 自分に繋ぎ止める為の枷。 見るたびに自分の事を思い出すのだろうと思えば、嬉しさしか残らない。 自己満足でもないよりは、ずっといい。 「緑間っち」 隣りに並ぶ緑間の右手を握って引き寄せた。 「好き」 指先に口唇を落とす。 その指に誓うように。 そっと伝えた。 お誕生日おめでとう! |
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2012/07/07 |
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緑間っちの誕生日に全力を尽くす! |
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