happen to meet

 
     
 


その日は、朝からついていなかった。
蟹座の運勢は最下位。
落し物や人間関係に注意。
まさに占い通りである。
自転車はパンクしていたし、ラッキーアイテムのゴルフボールはすぐにどこかへ転がっていく。
靴ひもは切れるし、歩きづらいし、足元ばかり気にしていたら、電柱にぶつかった。
このままでは不運が連鎖すると、緑間は通り道にあった公園のベンチに座って、一呼吸置くことにした。
部活は自主練日だ。
遅くなろうと咎める相手は誰もいない。
それでも指先が気になるくらいには、バスケットボールに触れたかった。

(時間を無駄にしたくないのだよ)

両手を見つめて、深い息を吐く。

「なにしてんだ?」

人の立つ気配がして、見上げると同時に声をかけられた。

「青峰」
「なんでお前がこんなとこにいんだよ」
「それはこっちのセリフなのだよ」
「ここは、俺の昼寝スポットだし〜」
「こんなところまで寝る為だけにわざわざやってくるとはな」
「どこで昼寝しようと俺の勝手だろ」

青峰はドカッと緑間の隣りに腰を下ろした。
表情を変えることはなかったが、緑間は相当驚いていた。
青峰とは卒業して以降、試合会場以外で会う事はないと思っていたのだ。
テーピングをした指でメガネのブリッジを押さえ、緑間は青峰から目を逸らした。

「お前、まだ練習してんの?」
「当然なのだよ。人事を尽くしてこそ、勝利は導かれるのだから」
「はっ。かっわんねぇな。練習なんてくそくらえだ」

青峰はつまらなさそうに足元の小石を蹴り上げた。
小石は勢いよく飛んで、少し離れた外灯に当たり、金属音が響く。
新緑の生い茂る季節は、まだ日差しが柔らかい。
遠くで子供の泣き声がする。

「別にそれを青峰に強要するつもりはないのだよ。必要な事を必要な時に尽くせばいい」
「・・・・・・」

風が二人の間を通り過ぎていく。

「おもしろくねぇんだよ。なにもかも」

吐き捨てるように言った青峰の声が、酷く苦しそうで緑間は隣りを見た。
一緒にバスケをしなくなって数ヶ月。
青峰はまた一段と強くなったように思える。

(天賦の才を与えられ、持て余す。今はまだ修行の途中なのだよ)

強さに限界はない。
まだまだ発展途上だ。
己を超える敵は、すでに爪や牙を磨いで、待ち構えているだろう。
油断は禁物なのだ。
すぐにおもしろくない事はなくなる。
つまらないと言う時間さえ消えるだろう。
ただ、それを教えてやるつもりはない。
自分で気付かなければ意味のない事は山程ある。
そして、教えたところで素直に聞き入れる相手ではないのだ。

「緑間。まだ時間あんのか?」
「いや、もう行くのだよ」
「あと30分付き合えよ」
「バカを言うな」
「うるせぇ」

有無を言わせぬ強い口調で青峰は言い捨てて、緑間の肩に頭をのせてきた。

「青峰っ」
「30分っつっただろ」

あいた口が塞がらない。
緑間が反論する前に寝息が聞こえてきた。

(はやすぎるのだよ・・・)

呆れ半分、諦め半分。
肩にかかる重さと体温が少し懐かしくて、緑間は小さく溜息を吐いた。
見上げた空に飛行機雲の描いた白線が残っている。
まるでセンターラインのようだ。
何もかもまだ始まってさえいない。

(やっぱり、最下位だけあるな。ラッキーアイテムだけでは覆せなかったのだよ)

すやすやと眠る青峰を叩き起こしたい衝動を抑えて、緑間は眼鏡をかけなおした。



終わり



 
     
 

2012/06/13

 
     
 

初書き青緑。
緑間にはたぶん恋愛要素はないですね。
青峰→緑間というイメージです。
タイトルは出くわすという意味です。
偶然出くわした二人。

 
 

つづきっぽいもの → impulsive