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rebelled |
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自主練をしている姿を何度も見ていた。 ただひたすらにスリーポイントラインの外側からシュートを放つ。 延々と繰り返す。 練習だというのに、はずす事はない。 真っ直ぐに伸びた両腕が描く線をきれいだと思った。 ゴールに入ったボールが落ちて転がる。 静かな体育館に響く音はいつもより広がって聞こえた。 「まだかえらねぇの?」 真っ直ぐに伸びた背中に声をかける。 黙って見ていたけれど、さすがに飽きてきた。 崩れない集中力を尊敬する。 「青峰・・・」 振り返った緑間は、さほど驚いた様子も見せず足元に転がっていたボールを拾った。 額から首筋にかけて滴が流れ落ちていく。 Tシャツは汗に濡れ、色が濃くなっていた。 「オマエこそまだ帰らなくていいのか?」 「待ってたんだっつーの」 「何か用でも?」 「ない」 きっぱりと言い切ったら、緑間から返事はなかった。 緑間は真っ直ぐにゴールを決めた後、床に転がっているボールを拾い始めた。 「青峰、暇だったらそっちのボールを拾うのだよ」 「拾ってくださいだろーが」 青峰は飛び跳ねるように立ち上がって、手前に転がっていたボールを籠に投げ入れた。 「なぁ、1on1しようぜ?」 予告もなくボールを緑間にパスする。 反射的にそれを片手で受けとめた緑間は自分の持っていたボールとで両手が塞がった。 「断るのだよ」 「なんでだよ。オマエがディフェンスつえーの知ってんだし」 「オレも同じくらい青峰が強いのを知っているのだよ」 緑間が青峰を避けるように両手のボールを籠に入れた瞬間、手首を掴んで自分の方へ引き寄せた。 「逃げんのかよ」 「万全を期さねば勝てない勝負を安易に受けるわけにはいかないのだよ」 「お遊びだろ?」 「お遊びだからなのだよ」 至近距離で見つめ合う。 緑間の表情は変わらない。 淡々と、それでも負けず嫌いの闘志は目の奥にある。 青峰はもう片方の手首も掴むとそのまま、口付けた。 触れただけのキスだったけれど、思っていた以上に温かい。 先に顔を逸らしたのは緑間で、掴まれた手首を振りほどこうとするのを力任せに抑えた。 頬が少し紅く染まっているように見える。 怒っているのか照れているのか、判りづらい。 「なぁ、オレの事好きか?」 めちゃくちゃに泣かせたいと思うのは、どこから生まれる感情なのだろうか。 表情が変わる事もない、真面目で堅物、プライドが高いと評される緑間が欲しいと思ったのはいつからか。 共通点があるならば、バスケが好きすぎるところだ。 「手を放すのだよ」 指先が震えている。 青峰は掴んだ手首をそのまま自分の口元へ寄せた。 「答えろよ」 期待などしていない。 それでも追い詰めたいとも思う。 自分自身の事だけを見ている緑間の意識を視線を捕えたい。 「正直に言うならば、嫌いなのだよ」 真っ直ぐに見据えた眼鏡越しの瞳はゆるがなく、ただ感情も読めない。 予想はしていた。 それでも、予想以上にそれは、青峰に衝撃を与えた。 緑間は力の抜けた青峰の手を振りほどき、ボール籠を用具室に片付けるとそのまま体育館を出て行った。 どこまでストイックに徹するのか。 誘惑にはのらない、真面目で正直なヤツ。 「はっ。おもしれぇ」 簡単に手に入るのなら、こんなにも焦がれる事はない。 青峰は一人残された体育館で静かに笑った。 終わり |
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2012/06/19 |
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帝光中学時代 2年生。 |
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