pained

 
     
 


首筋。
それから、鎖骨。
色白い肌に口唇を落として、強く吸うと、紅い印が咲いた。
邪魔をされないようにとネクタイで手首を縛って、膝を曲げた両足の間に身体を入れ、動けないように体重をかける。

「青峰っ」

口を塞ぐ物がなかったけれど、くすぐったいのか、感じているのか、ふとした瞬間に漏れる甘い声が聞こえるからそれでよかった。
少し、うるさいけれど。

「最後までしねえから、安心しろって」
「バカか。さっさとほどくのだよ」
「ほどいたら逃げんだろ?」

はだけたシャツをさらに広げて、露になった胸の突起をそっと舐めとると、緑間の体がびくりと震えた。

「感じんの?」

青峰は意地悪く笑って、舐めたり吸ったりを繰り返し、もう片方の突起は指先で転がすように弄った。

「も、やめ・・・」

普段与えられることのない刺激に緑間は震え、呼吸を乱した。

「ほんと、エロいな」

縛られた両手で顔を隠す緑間の口唇を塞ぐように重ねて、逃れようとする舌を絡め取る。
口内を余すことなく貪る様に奥の方まで味わうように嘗め回す。
酸素を求めて無意識に開けた口唇の端から唾液が零れた。
熱い吐息が漏れて、それがまた甘く誘う。

「理解できないのだよ」

静かに緑間が擦れた声で言った。

「しなくていーし」

緑間から眼鏡を取り上げ、その瞼に口唇を落とす。
長い睫毛に少し見惚れて、そのまま頬にキスをする。

「お前は嫌いかもしんねぇけど、俺は好きなんだよ」

子供じみた独占欲は、真っ直ぐ暴走する。
驚いたように目を見開く緑間にもう一度口付けた。
今度は触れるだけの、優しいキス。

「逆効果だと思わなかったのか」
「欲しかっただけだ」

こんな事をしても緑間は手に入らない。
それは、青峰が一番良く知っていた。
それでも止められなかった。
誰もいない教室で、制服姿のまま居残っていた緑間を見つけた。
きちんと隙間なく閉められたネクタイをほどいてしまいたくて、教室の床に押し倒したのだ。
不意打ちを食らった緑間に抵抗する隙も与えず、そのネクタイを乱暴にほどいて両手首を縛った。
薄暗い教室でも肌の白さが淡く浮かんで、青峰は誘われるままにその首筋に吸い付いたのが始まりだった。

「嫌いだなんて、言うから・・・」

好かれてはいないと思ってはいたが、はっきりと嫌いと告げられる程とは思ってもいなかった。

「泣いているのか?」
「泣いてねえよ」

眼鏡がないせいか、緑間の視点がゆらゆらとしている。
その目がきれいだと思った。
このまま何も映さなければ自分以外の誰かに嫉妬することもない。

「これをはずすのだよ」

縛られた両手を青峰の前に突き出した。
青峰は言われるままに手首のネクタイをほどいた。
自由になった手で、緑間が青峰の頭を優しく撫でる。

「そんなに気にするとは思わなかった」
「気にするだろ。あんなにはっきり言われたら」
「本当の事なのだから仕方ないのだよ」

はっきりと言い切る所は先日と同じだ。

「俺のどこが嫌いなんだよ」
「全部なのだよ」

即答されて、青峰は緑間の上に倒れ込んだ。

「全部って何だよ。俺の何が悪いんだよ」

緑間の肩口に顔を埋めた。
何故か甘い香りがして、不思議に思う。
触れる体温が心地好い。

(もっと優しくしてぇのに・・・)

させてはくれないのは緑間の方だ。

「青峰、寝るのならどいて欲しいのだよ」

青峰の手から眼鏡を取り返した緑間は強引に上体を起こした。
そこから転がり落ちた青峰は、膝をついて四つん這いのまま、緑間に顔を近付けた。

「俺の事、好きになれよ」
「どうやって?」

聞き返されたところで答えなどないのだ。
青峰はもう一度緑間にキスをして、立ち上がった。

「どうにかして」

振り返ると緑間は乱れたシャツを正して、慣れた手つきでネクタイを締めていた。
隠された鎖骨と胸にはまだ痕が残っているはずだった。
それを思えば、背筋に快感が走る。

「今日のような事は二度とないのだよ」
「感じてたくせに・・・ってぇ」

握った拳で思い切り頭を叩かれて、青峰はその場にしゃがみ込んだ。

「二度はないのだよ」

涙目のまま見上げた時には、緑間は教室から逃げるように出て行く所だった。
青峰は慌てて追いかけると、珍しく怒りを顕わにした緑間がそこにいた。

「怒ってんのかよ?」

緑間からは返事がなかった。
それから一週間、青峰は緑間から一切口をきいて貰えなかった。



終わり



 
     
 

2012/06/20

 
     
 

rebelledの続き。
帝光中学時代 2年生。
青峰→緑間。
強引な青峰に対して不機嫌になったのは緑間です。
青峰はいつも自分の欲望に忠実。
pained=強引。

 
 

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