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12月12日 |
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マフラーを巻いて歩く街のディスプレイが、赤や緑や金色に変わっていることに気付く。 コンビニに入っても流れる曲はクリスマスソングで、ちらほらと目に入るPOPには、クリスマスケーキの予約はお早めに!の文字が楽しそうに飛び跳ねている。 (クリスマスかぁ) あまりにも日々の練習に必死になりすぎていたからか、その存在を忘れていたことに気付いて、思わず笑ってしまう。 クリスマスイブもクリスマス当日もウィンターカップの真っ最中だ。 クリスマスどころの話じゃない。 だから、忘れていた。 試合日程としか覚えていない自分に、少しだけ驚きながら、またそれもいいと思った。 去年のことに思いをはせるのは、まだ早い。 ただ、クリスマスという言葉に混ぜて、普段贈れないプレゼントを選ぶのは悪くないとも思う。 貰って欲しいものなど、ひとつしかないけれど、それを渡す機会はきっとない。 (いっそ、お正月にお年玉とかって渡すべき?) そんなくだらない事まで思いついて、渡した瞬間の呆れた表情まで鮮明に想像がついて、苦笑する。 驚いたり、笑ったり。 一人でいるのは、少し挙動不審だ。 (会いたいな) こんな風に、思考を支配される時は特に思う。 目の前で、声が聞きたくて、そっと触れたくて。 (なんで一緒に住んでないんだろ) 家に帰ればそこにいるという環境は、こんな風に会いたくなってもいつでも会える幸せに満ちているのかもしれない。 きらきらと光るイルミネーションの前を通り過ぎて、ふと見上げた空には、半分の月がビルとビルの間にそっとあった。 (半分じゃ、足りない) どうして、こんなにも欲しいと思ってしまうのだろう。 居ない場所を選んだのは、環境であり周りの意志であり、最終的には自分だというのに。 春よりもずっと気持ちは近付いたのに、春よりもずっと寂しい。 そんな風に思う時間もないほど、毎日はバスケばかりなのだけど。 会いたい会いたいと我がままを言える時じゃないことくらいは、わかっている。 自分も相手も大事な時期なのだ。 それでも。 我慢ができずに携帯を握り締める自分を笑う。 気の早いクリスマスソングが微かに聞こえる。 「ねえ、緑間っち。オレ、今までどうやってわがまま言ってたか、忘れちゃったみたいっス」 冷たい風に少しだけ身を縮めて、黄瀬はメールを打った。 終わり |
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2012/12/12 |
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一日一黄緑。 |
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