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12月13日 |
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今日の始まり。 今日の終わり。 いつからか、緑間の携帯電話にメールが届くようになっていた。 最初は、おはよう、おやすみだけだった。 そのうち一言がつけたされるようになった。 『おはようっス。今日は寒いっスね』 『おやすみっス。オレの夢みたら報告して』 時間によって、返事をしたりしなかったり。 起きた時におやすみに気付き、朝練の後におはように気付く。 それでも。 メールがないと、なんだか落ち着かなくなってしまっている。 (変わったと言うべきか) 自分の受け取り方の変化。 それは間違いなく、春から冬にかけてゆっくりと広がってきた。 メールだけが原因ではないけれど、元気なのだと文字が示す。 側にいない相手のことがわかるだけで、安心することもあるのだと知った。 冷たい風が吹きつけるようになった12月。 練習も実戦形式が増えてきた。 毎日、毎日、ただひたすらに厳しい練習をこなす。 春に比べれば倍以上に増えたはずの練習メニューに、脱落することなくついていけるようになっていた。 それを成長と呼ぶのなら、自信にもつながる。 環境は、悪くない。 チーム全体の雰囲気も以前とは違う。 目前の目標が近付いているからだ。 一体感が増している。 自分がすべきことは、ただ、シュートを落とさないことである。 それは、ずっと、変わらない。 それでも。 (言葉にするのは、少し、怖い) マフラーにそっと顔をうずめ、歩きだす。 ポケットの中の携帯電話はいつでも触れることができる。 会いたい、会いたいと黄瀬がしつこかったのは、夏前だっただろうか。 会いたいと思うだけで会えるなら、メールも電話も必要ない。 今もその頃と変わらず、学校とバスケの両立だけで、一日が終わる。 そんな毎日だけれど、心の拠り所は別の場所にあるのだと、思う。 たとえば、おはようやおやすみのメール。 文字だけれど、自分にだけ宛てられたそれは、大切な毎日のひとつだ。 キャンドルに火が灯る様に、それはそっとずっとほのかに宿っている。 会いたい。 声が聞きたい。 そんな風に繰り返す黄瀬のことが、ようやくわかったような気がした。 それでも。 (優先順位は変わらない) 大切だけれど、大事なものを見失ってはならないから。 見上げた空には、半分の月があった。 (見えないけれどもう半分はある) ずっと側にあるから。 冷たい風が髪を揺らしていく。 ポケットの中の携帯電話に触れた瞬間、メール着信の音が聞こえた。 終わり |
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2012/12/13 |
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一日一黄緑。2日目です。 |
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