consciousness 1

 
     
 


最初からすぐにわかった。
後ろを通り過ぎる時、気配とかそんなものもなく、ただ、その存在を見失わなかった。


緑間から聞いていたのは、ミスディレクションという技をもって、試合中の存在感を消すという事、そして、パスに特化した選手であるという事。
ポジション的にも対峙するのは自分の役目だった。
緑間が認めている選手。
緑間と一緒にキセキの世代と一緒にレギュラーに名を連ね、試合に出ていた実力を持つ。
キセキの世代ほどの才能があるわけではなく、一人では役に立たない。
ただ、周りの選手を引き立てる方法を熟知しているのだ。
パスを回して、チームを、試合を司る。
同じ一年同士だ。
負けるわけにはいかなかった。
同族嫌悪。
自分と同じ性質の相手だからこそ、意識をしてしまう。
負けたくなかった。
直接対峙してわかった事は少ない。
結果は負けた。
東の王者と呼ばれた歴史のある学校で、チームで。
敗北を期した。
見失う事はないと思っていたけれど、それを逆手にとられた。

(おもしろい・・・)

生まれた緊張感は、背筋を通り過ぎていく。
まっすぐに見合っていたはずなのに、見てはいなかったのだ。
自分を認識されない事には慣れている。
いつも誰かの引き立て役なのだ。
けれど、自分がいなければ誰かが引き立つことはない。
その優越感。

(だから、俺は、このポジションを選んだ)

じゃあ、黒子は・・・?

影という場所で、光という存在を引き立てる為に、そこにいて、満足しているのか?

ほんの少しの疑問。


人を好きになる理由なんて、そんなに深く考えなくてもいいのだと、思う。
真っ直ぐな視線と不可思議な存在。

「ねぇ、真ちゃんは黒子のことどー思ってんの?」

放物線を描いたボールは、ゴールのリングの縁に当たって、落ちた。
珍しいこともあるものだと、高尾は笑う。

「・・・・・・、苦手なのだよ」

少し、躊躇いがちに答えた緑間が、落ちたボールを拾って、もう一度シュートを放った。

「なんで?」

それは、素朴な疑問だった。

「黒子と話せばわかる・・・」

答えは答えになっていなかったけれど、それ以上はきっと教えてはもらえない。
ボールは音も立てずにゴールに吸い込まれていく。
緑間が視線をちらりと向けて、何かを確認した後で小さく息を吐いた。

「オマエなら大丈夫そうなのだよ」
「な、なにが?」

転がったボールを拾って、センターラインまでやってくる。

「人には相性というものもあるということだ」

ボールを二度、三度ついて、両手におさめた。

「俺が黒子と相性いいってことかよ」
「それは、わからん」
「真ちゃん、マジでいーかげんだからぁ」
「そもそもオレに聞くことが間違っているのだよ」
「だって、同中でキセキの世代だろー。真ちゃんの方が黒子について知ってる事が多いじゃん」
「先入観は必要ないと思わないのか」

相談する相手を間違ったと思いながら、他に相談する相手もいない。
親身になってもらえるとは思ってもいなかったけれど、こんなに心内まで見透かされるつもりはなかったのだ。
他人に関心が無いようで、その実良く見ている。
高尾は、無駄なダメージを受けて膝を抱えた。

「真ちゃんはいいのかよ。誠凛は敵だろ」
「試合に支障がなければ問題はないのだよ」
「自分はうまくいってるからって、もーちょっと真剣に話聞いてくれてもいーじゃん」

シュートモーションに入った緑間がボールを打つのをやめて、高尾の前にしゃがみ込む。

「オマエがどれほど本気かわからないからどうしようもないのだよ。高尾はどうしたいのかそこをはっきりさせろ」

目の前の深緑色の瞳に映る自分はどんな顔をしているのだろう。
ちゃんと笑えてる?
それとも情けない顔をしてる?

「どうしたいかわからないくらい、知らねえんだけど?」
「誠凛とはそう遠くない。いくらでも会いに行け」
「えー・・・」

思っていた以上のぞんざいなアドバイスに、高尾はもう笑うしかなかった。
確かに、緑間の言う事は正しい。
知らないのなら、知ればいい。

「じゃあ、黒子のメアド教えて」
「断る」
「なんでだよ」
「黒子とは相性が悪いと言ってるだろう。自分で聞いてこい」

逃げるように立ち上がって、緑間は再びシュート練習を始める。
これでも真剣に対応してくれた方だ。
もっと蔑ろにされてもおかしくないような曖昧で相談とも言えない相談だったというのに、何に対しても真摯なのだと、その真っ直ぐな背中を眺めた。
最終的には少々強引ではあるけれど、立ち止まってもたもたしている背中を押された。

(きっかけをくれたってことか・・・)

自分でメアドを聞きに行くという『用事』ができてしまった。

(うまくいってることは否定しないっつーことは、ほんとにうまくいってんのかよ)

聞かない限り話そうとはしないけれど、最近の緑間は以前にも増して穏やかだ。
それは、たまに校門まで迎えにやってくる黄色の髪をしたモデルのせいであることは間違いはない。
羨ましいと思っている事まで理解されている気がして、溜息が零れる。

「誠凛に行くときつきあってよ」
「断る」

即答されたけれど、きっとこの背の高い真面目なお人好しは一緒にいてくれるに違いない。
高尾は緑間が手にしたボールを素早く奪って、ゴール下まで持ち込み、そのままシュートを決めた。



終わり



 
     
 

2012/08/28

 
     
 

高尾→黒子。
初書きが連載になってしまって、
まあ、ちょっと戸惑いましたよね(笑)
高尾くんと黒子くんが書きたい!と思って。
そのうち、黄緑と一緒に行動して欲しいとの、
願望というか、
そんな感じで、高黒です。

 
     
 

→