12月21日

 
     
 


『緑間っちは、不安になる時ってないんスか?』

いつだっただろう?
そんなことを聞いた。

『言霊を知っているか?』

そう言われた。
言葉にするとそれが本当にになるらしい。

『だから、言わないのだよ』

不安に思ってることも怖いと思ってることも。
全部全部声に出さないようにしてるって。

(吐き出さずに溜め込んだものはそのままなんじゃないんスか?)

バスケットボールをゴールに向かって撃つ。
それは、バックボードに当たって、リングを揺らし、下に落ちた。

『今なら、オレしかいないっスよ?』

聞かせて欲しいとねだった。
緑間っちが不安に思うこと。
少し、困ったように目を伏せて、それから、しばらく黙った後で、静かに言った。

『オマエがいなくなること』

言った後、恥ずかしそうに抱えた膝に顔を隠してしまった。
夏の終わり。
エアコンのきいた涼しい部屋が急に熱く感じた。

(そうだ。夏だ。・・・まだ覚えてる)

あんなに真っ直ぐで、あんなに素直な告白を聞いたのは、初めてだった。
だから、時々思い出す。
見えないものに挑む時、脳内に再生される、低く甘い声。

(今はオレが何かを不安に思ってる・・・)

何を恐れているのかわからないけれど、近付く大きな試合の前で、震えているのかもしれない。
負けたくない。
負けない。

でも、結果のわからない試合もおもしろい。

転がったボールを拾って、もう一度シュートを撃つ。
目を閉じていても入るくらい練習してもほんの少しのズレで、落ちてしまう。

『いなくならないっスよ』

そう断言したら、そうだなと言って笑った顔も覚えている。
言霊を信じているのなら、不安を打ち消すのも言葉の力だ。

「勝つっスけど」

両手でぱちんと頬を叩いて気合いを入れた。
シュートがはずれたら、また撃てばいい。
何度でも。



終わり



 
     
 

2012/12/21

 
     
 

黄瀬くんが否定しくれるのがわかっているから、
一番否定して欲しいことを言う、
緑間くん。

 
     
 

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