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12月20日 |
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ロードワークと称して、夜道を走る。 朝練の前に走り、朝練をこなし、授業を受けて、ハードな部活の後、自主練もして、一日の最後にも走る。 だいぶ、体力がついたと自分でもわかる。 黄瀬は緑間の家の近くにある公園までやってくると、メールを送った。 さすがに直接家まで行くには、時間が遅すぎる。 ブランコ、滑り台、砂場、ジャングルジム、シーソー。 遊具は少なく、近所の子供が遊ぶ為だけの小さな公園。 中学時代は時々この公園で、コンビニのアイスを食べながら時間を潰した。 何を話していたかは、もう覚えてもいない。 水飲み場の側に外灯がひとつ。 青白い水銀灯の下で、体を冷やさないようにストレッチをする。 「バカ者」 人の気配に気がついて振り返った瞬間、べしっと頭を叩かれた。 「緑間っち!」 「何時だと思っているのだよ」 「午後10時〜」 笑ってみせると、呆れたように溜息が一つ返ってくる。 紺色のコートとマフラー姿の足元はジャージとスニーカー。 きっとそろそろ寝る時間だったはずだ。 「・・・こんな時間まで走っているのか?」 自分がしていたマフラーをぐるぐると黄瀬に巻いてくる。 「今日は特別っス。いつもは9時くらいまでかな」 急に温かくなった首元から、ふわりと甘い香りがした。 黄瀬は堪らずに緑間を正面からぎゅっと抱き締める。 今日の目的は、これだ。 「持久力の他に忍耐力もつけた方がいいな」 緑間もそっと黄瀬の腰に手を回してくるから、それが嬉しい。 「がまんしたっス〜」 「・・・そうだな」 静かな場所で、耳元にだけ声が響く。 伝わる温もりが心地好い。 「緑間っちは?緑間っちだってオレに会いたいって思ってたんスよね?がまんできないとか思ってたんじゃないっスか?」 「これくらい我慢できなくてどうするのだよ」 「もー、緑間っちはもっと我がまま言っていいんスよ?」 「オマエの我がままだけで充分だ」 「そうじゃなくって」 もっと、素直に甘えて欲しい。 キスだって、なんだって、欲しいものは全部あげたいのに。 「今日だってオマエの我がままのせいで、会えたのだよ。これ以上、何を言えと?」 緑間は何も言わない。 なのに、さらっと、心臓を止めるほどの殺し文句を言うのだから、始末におえない。 「うーわーあー。緑間っちさいてー」 我がままを許し、そして、甘やかす。 心臓がいくつあっても足りないと、黄瀬は耳の端まで熱くなっていくのを感じた。 「善人だったときなど一度もないのだよ」 「知ってるっス。・・・全部好き」 今だって、本当は少し無理をしてる。 体が温かいのは、たぶん、眠いせい。 それでも会いたいと思ってくれたことが嬉しい。 「次はないからな」 こんな風に会うのは、今夜だけだ。 ウィンターカップが終わるまで今度こそ本当に我慢しなければならないと、それは、黄瀬自身が一番良くわかっていた。 「わかってるっス。かわりに初詣は一緒に行きたいっス」 「かまわないが」 「やった!約束っスよ」 「ああ」 「また電話してもいいっスか?」 「ダメだと言ってもしてくるくせに、何をいまさら」 「これでも気をつかってるんスけど?」 「バカだな」 「なんで!」 「遠慮する必要はないのだよ」 「バカは緑間っちの方っス」 「そうかもな」 「だから、そーゆーところが!」 ずるい。 黄瀬は微笑う緑間の口を塞ぐように唇を重ねた。 (意地悪で、卑怯で、最低で・・・) 思いつく程の悪態も全部そのまま注ぎ込めたらいいのに。 どちらともなく、そっと離れて、そのままぎゅうっと抱き締め直す。 「あともーちょっとこうしてていいっスか?」 「ああ」 寒さを感じないのは、どちらの熱が高いからか。 (きっと両方・・・) 次に会うその日まで、この温もりを忘れないようにと、そっと願った。 終わり |
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2012/12/20 |
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私の思う、かわいい黄緑とは、 |
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