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12月19日 |
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12月。日の出は遅れ、日の入りは早くなる。 暗い部屋で目覚ましのアラームが鳴り響く。 黄瀬は、目を閉じたまま布団から手を伸ばして、音を止めて、ぐずぐずと自分の体温で作った心地好い温もりから逃れられなくて、ごろごろと寝がえりを打つ。 午前6時前。 外はまだ真っ暗だ。 気合ひとつで布団を投げ飛ばせたらいいのにと思いながら、過ぎていく時間を気にしている間に寝ぼけていた意識は徐々に覚醒していく。 (走って、ご飯食べて、朝練・・・) 毎日がバスケが中心で、全てが優先される。 その原動力が勝ちたいという気持ちなのだから、不思議だ。 春から数えて八ヶ月。 自分の変化は自分では良くわからない。 日課となっているおはようのメールを送ろうと携帯電話を手にして、先に受信メールを確認する。 それまで、動作までもが鈍かったくらいにぼんやりしていたというのに、一瞬で目が覚めた。 『おはよう』 たった1行。 きっとそれ以上、何も思いつかなかったのだろう。 それでも、自分が送るよりも先に緑間からメールが届くのは初めてだった。 (うっわぁああ・・・) 人に話したら笑われそうなくらい、些細なことかもしれないけれど、自分のテンションが上がるのには、十分な効果だ。 受信メールの画面を開いたまま両手で握り締めて、なんどもその送信者と本文を確かめる。 真っ暗な部屋の中、手元だけが明るい。 久しぶりに電話で話した翌朝にこれだ。 狙っているとは思えないが、無意識であればある程、性質が悪い。 (なんとかして、会えないかな。会いたいな) 学校へ行くよりも近い。 いつでも会える距離だと思っているから会えないのかもしれない。 ベッドからおりて、カーテンを開ける。 まだ、外は夜と同じ暗闇に包まれてた。 『おはようっス。 緑間っちも早起きっスね。 今日もいい天気らしいっスよ』 まだ見ぬ青空。 黄瀬はミュージックプレイヤーをジャージのポケットに入れて、家を出た。 冷たいけれど、澄んだ空気が頬に触れる。 (今夜、会いに行ったら怒るかな) 好きな音楽を聞きながら、走りだす。 会いたい。 会いたい。 そう思える相手がいる。 (思うだけじゃ足んないんスけど) 夜が明ける瞬間。 空の色がじわじわと変わっていく。 今日はいつもより、幸せな一日の始まり。 終わり |
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2012/12/19 |
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おはようとおやすみと。 |
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