12月18日

 
     
 


「ねえねえ、緑間っち」

久しぶりに一緒になった帰り道、外灯の灯りがまばらな住宅街の路地を通れば、人の姿を見ることは少ない。
制服姿の後ろから、ぎゅっと抱きしめる。
学ランの生地はブレザーとは違って、さらさらとして、少し硬い。
抱き心地が少し違うけれど、それはそれで緑間っぽい気もする。
身長差6センチ。
唇が一番近い場所が耳元。
見えるうなじにそっと唇を落とせば、腰にまわした手をつねられる。

「・・・いった」
「往来で、何をする気なのだよ」
「何して欲しいんスか」

人通りのない道だから、許されている。
ぎゅうぎゅうと密着して、笑う。
あったかい。
こうしてくっついても突き放されなくなった。
それが、うれしい。

「緑間っち、好きっスよ」
「・・・・・・」
「緑間っち?」
「・・・・・・」
「みーどーりーまぁっち?」
「・・・・・・」

返事がない。
腰にまわした腕をはずして、そおっと覗きこんだら、それを待ち構えていたのかべしっと額を叩かれる。

「いった…!照れなくてもいいんスよ?」

額をさすりつつ、唇を尖らせて見せれば、今度は頭を撫でられる。

「なんなんスか?」
「オマエのどこが好きなのかと思って」
「え?なに?どーゆーことっスか?」

緑間の視線に見下ろされる。
こーゆー時に限って、表情はひとつも変わらない。

「なんでもないのだよ」

指先で眼鏡をそっと押し上げて、緑間はぷいっと顔を逸らしてしまった。
今、ものすごく大事なことを聞き損ねたような気がした。

「なんでもあるっスよー。オレのどこが好きなんスか?」

緑間の真正面に移動して、そのままぎゅっと抱きしめる。
顔が近いけれど、目は合わない。

「どこだろうな・・・」
「オレは緑間っちのそーゆーところも嫌いじゃないっス」

真面目なくせに素直じゃなくて、正直なくせに黙ってしまう。
以前は、わからなくて、もどかしくて、イライラばかりしていたけれど、最近は、そんな緑間の本音を引き出すのが少し楽しい。

「いいかげん、離れろ」
「いやっスー。あったかいし」
「寒いのなら、もう帰るぞ」
「いーやーだー」
「バカか」
「バカでいいっス」

ぎゅうぎゅうと背中にまわした腕に力を込めたら、諦めたのか緑間が小さな溜息を吐いた。
それから、ぽんぽんと優しく後頭部を撫でられる。

「緑間っちって頭撫でるの好きっスよね」
「・・・そうかもな」
「オレ以外にしたら嫌っスよ」

冗談めかして笑う。

「わかった」

答えは予想外の真面目な声で、幻聴かと一瞬疑ってしまう。

「えっ?」
「もともと撫でたいのはオマエの頭だけだから問題ないのだよ」
「そ、じゃなくて」
「なんだ?」
「なんでもないっス」

聞きだした本音にまんまと振り回されて、少し悔しい。
顔が見えないけれど、いつもと同じほとんど無表情で言っているのかと思えば、もっと悔しい。
一言一句にどきどきするのは、自分だけなのだろうかと、思ってしまう。
それでもあたたかな体温が気持ちよくて、離れたくなかった。
ほんの少し、抱きしめた腕の力を緩めたら、こめかみにやわらかなものが触れた。

「緑間っち?」

顔を上げたら、間近の緑間と目が合った。

「オマエのそーゆーところは好きかもしれないのだよ」

緑間が口の端をそっと緩めて笑う。

「ど、どこ?」
「・・・二度は言わない」
「ええ?」
「帰るぞ」

油断した隙を突かれて、緑間が先に歩きだしてしまった。

「ま、待って」

慌てて隣りに並んで歩く。
どきどきしたりびっくりしたりよろこんだり、忙しい。
やっぱり、なんだか、悔しくて、緑間の手を握る。
自分の半分でもかまわないから、少しくらいどきどきすればいい。
そう思ったのに黙ってそっと握り返してくるから、敵わない。
悔しさを指先に込めて、ぎゅうっと更に強く握り返した。



終わり



 
     
 

2012/12/18

 
     
 

少し甘えたな、
いわゆるわんこっぽい黄瀬くんを書いてみたくて、
いつも以上にストレートに懐かせてみたら、
なんだか、思ったような、
わんわんわん☆っていう感じにならなかったです。
おかしいな・・・。

 
     
 

12月17日 ←  → 12月19日