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| 番外編。2と3の間の話。高尾くん視点です。 | ||
緑間はどれだけ宮地さんの事が好きなんだろう。 宮地さんはどれだけ緑間の事が好きなんだろう。 俺がその事を知るのは、ずっとずっと先の話。 *** 今朝から、緑間の様子が少しおかしい。 おかしい事に気付いているのは、たぶん俺だけだと思う。 それくらい、緑間の事を知っている人間が他に居ないからだ。 どこがおかしいのかと言えば、朝練でシュートをはずした。 1回きりだったけれど、ボールはリングに当たって跳ね返ってた。 ディフェンスがいたわけでもなく、試合形式の練習でもない。 なのに、はずした。 緑間の近くにいた宮地さんが笑ってるのが見えた。 朝練の前から、体育館に二人で居た。 それは、珍しい光景ではなかったけれど、宮地さんが緑間と話しているのは珍しかった。 *** 「ねえねえ、真ちゃん。宮地さんとなんかあった?」 昨日、家の用事で緑間を残して先に帰った事を少し後悔した1限目と2限目の間の休み時間。 身体ごと振り返ったら、緑間が笑っていた。 笑っているというより、ちょっと口元が緩んでた。 俺が振り向いたから、その笑顔はすぐに消えてしまったのを残念に思う。 「・・・」 緑間は俺と目を合わせたまま、少し迷っているようだった。 それは、何かあったのだと理解するのに十分な要素で、答えはいらなくなってしまう。 「言いたくないなら言わなくてもいーけど」 緑間の机の上に突っ伏してみる。 本当は聞きたいけど。 しつこくしても言わない時は言わないし、言いたい時は聞かなくても言ってくれる。 だから、俺は待つようになった。 忍耐強い自分をときどき褒めたくなる。 いつも怒鳴るし、いつも厳しいし、すぐに手が出るし、物騒な事もバンバン言うし。 だけど、全然憎めないのが宮地さんで。 バスケに対しては本当に真面目で、いつだって真剣に練習をしてるのくらい、知ってる。 (いつからだったかな。緑間が宮地さんのことばっかり見るようになったの・・・) 周りに興味のないように装って、本当は誰よりも全体を見ていた。 特に部活での練習中は、自分にも関係があるせいだからだろうけれど、レギュラーの、特にスタメンの一人一人の動きを目で追いかけている。 その視線が宮地さんに集中し始めたのはいつだったっけ。 気付いてるのは、俺だけで。 俺は無意識に全体を見てしまうし、立場上緑間の事を常に意識してるから、尚更その変化がわかってしまう。 (なにがあったのかな・・・) 昨日。 間違いなく、昨日、何かあった。 それだけしかわからないけれど、それが気になる。 結局緑間は何も言わないまま、俺の頭を犬や猫を撫でるような優しさで撫でてきた。 頭を撫でられるって、どうしてこんなに気持ちいいのかな。 まだ1限目が終わったばっかなのに。 眠くなるよ。 *** 昼休み。 天気がいいからと屋上で昼メシを食べようって、誘った。 二人きりになれば、緑間も何か話すかもしれないと思ったからだ。 日当たりのいい屋上の手すりを背にして並んで座る。 空は青くて、飛行機雲が線を引いて、鳥が飛んでたりした。 平和だ。 俺はおにぎりにかじりついて、そんな事を思った。 「宮地さんに好きだと言ったのだよ」 そうなんだ。 へー。 「・・・はぁっ?」 噴き出しそうになったおにぎりの欠片をむりやり飲み込んで緑間を見た。 緑間は左手でキレイな箸遣いで、ブロッコリーを口に運んでいるところだった。 今なんて言った? 真ちゃんが宮地さんの事好きなのは知ってた。 聞いてないけど、知ってたよ、俺。 真ちゃんは知らないかもしれないけど、真ちゃんの視線ってすごくおしゃべりなんだぜ。 見てればわかる事、たくさんあるんだ。 でも、なんなの、その展開。 「言うつもりはなかったんだが、勢いで言ってしまって、もう取り消すわけにもいかなくなってしまった」 緑間が宮地さんに告白した? どんな顔で? どんな風に? 無表情な横顔からは全く想像もできないのがもどかしい。 「それで?宮地さんはなんて?」 努めて冷静に。 冷静にならなければ、会話もできない。 頭の中はぐるぐるとしているけど、表面上はなんとか笑顔を作れた。 よし。 いける。 「こたえは聞いていないのだよ。聞くつもりもない」 「なんで?!」 つい、うっかり。 身体を乗り出して声を荒げてしまった。 緑間はそこでようやく驚いたようにこちらを向いた。 眼鏡の奥はいつもと変わらないくらいまっすぐできれいで。 こんな目で宮地さんに告白したのかと思ったら、ちょっと宮地さんが羨ましくなった。 俺に告白されても困るけど。 「必要ないのだよ。宮地さんがオレを好きになるなんて考えられない。だから言うつもりもなかったというのに、どうしてか言ってしまった」 「だって、それじゃ、真ちゃんの気持ちはどうするんだよ」 「どうもしない。ずっとここにあるのだよ」 そう言って、緑間は左手でぽんっと自分の制服の第二ボタンのあたりに触れた。 今までにないくらい、優しい表情をしていたので、本当にそれでいいらしい。 「気持ち悪いと否定され、近寄るなと拒絶されなかっただけ、よかったのだよ」 それは、今朝の宮地さんの様子を思い出せば間違ってはいない。 むしろ、そのせいで、距離が縮んだのではないかとまで思う。 (何があったのかって、それは、ありすぎだろ・・・) 落ち着け、俺。 深呼吸をひとつして、緑間の隣りに座り直す。 「そっか。真ちゃんがそれでいいなら、俺も黙ってるけど」 緑間が一番安心する言葉を選んだら、緑間がほっとしたような息を漏らした。 だけど、本音は別のところにあるのはどうしようもない。 「すまない」 「あやまんなよ。なんにも悪い事してねえんだから」 「・・・じゃあ、ありがとう」 「じゃあって、なんだよ、じゃあって」 「オマエはわがまますぎるのだよ」 「真ちゃんほどじゃねえし」 いつもと同じように笑い飛ばしたら、少し、すっきりした。 緑間はいつもと変わらなくて、きっと宮地さんもいつも通りで、しかたがないから、俺も知らないふりをするしかない。 それでも。 それでも。 俺は緑間に幸せになって欲しいんだけど。 終わり |
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2012/10/29 |
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高尾くんが真ちゃんとか緑間とかってごっちゃになってるのは、 |
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