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目も合わないし、笑った顔も見ない。 会話もないし、触れることもない。 どこが好きかと聞かれたら、答えることなんてできないくらい、何も知らない。 それでも、じわじわと侵食されていく感覚は嫌いじゃなかった。 *** 真っ直ぐにゴールを見詰める視線と腹が立つくらいの正確なシュートフォーム。 我がままという自由は許し難いけれど、そのパーフェクトなシュートは、悔しいけれど認めざるを得ない。 誰にも真似できない、唯一無二の、それは、武器だ。技術だ。 生まれた時に与えられた天性の才能には敵うものはない。 けれど、それが半分だと知った時の衝撃は、忘れていない。 毎日、毎日、毎日。 飽きもせず、シュート練習を続ける姿を目の当たりにして、羨むのをやめた。 (キセキの世代とかなんとか言われていてもこいつはただの人間だ) たった二つ年下の、ただの一年坊主の一人だ。 発想の転換。 そう思えた時、ようやく緑間という人間に興味がわいたのは事実だった。 (まさか好きだと告白されるとは思ってもなかったけどな) 宮地はその真っ直ぐに伸びた背中を睨んで、それから視線をコートに戻したら高尾がにやにやと笑っていたから、パイナップルのかわりにボールを投げつけた。 「もー、宮地サン、照れ隠し禁止っすよ」 「マジで轢き殺してやっから、覚悟しとけ」 「丁重にお断りしまっす」 高尾が投げ返してきたパスを受け取って、そのままシュートを撃った。 ボールはリングに当たったけれど、そのままネットを揺らして下に落ちる。 高尾がナイッシュと言った。 気がついたら、体育館に残っているのは、緑間と高尾と自分だけだった。 また、だと思った。 以前、遅くまで居残る高尾にどうしてだと訊いたことがある。 緑間より練習したいからと笑っていた。 冗談のように軽く答えていたけれど、本気の答えだったらしい。 緑間は常にマイペースで、自分の中にある決まりごとを守っているだけのように見えた。 バスケに関しては特に、誰に流されることも無く、ただひたすらに自分の感覚を確かめる為だけにシュートを撃っているようだった。 対照的で個性的な二人だと思った。 「真ちゃん、オレが宮地サンと仲がいいからって怒んなよ」 高尾の笑い声が響く。 振り返れば緑間がタオルで汗を拭いていた。 どうやら、今日の分を終了したらしい。 そんな緑間に駆け寄ってドリンクボトルを渡す高尾をかいがいしいなと思う。 「怒ってないのだよ」 「マジで答えんなっつーの」 べしっと背中を叩く高尾はずっと笑っている。 表情ひとつ変えずに受け取ったドリンクを飲む緑間の視線が一瞬だけこちらに向いた。 「仲良くなった覚えはねぇな」 「あ、宮地サン、ヒドイ」 瞬時にシナを作る高尾の頭の回転の早さは芸人並だとか、少し違う方向に思考をずらしたのは、緑間と目が合ってしまったからだ。 「もうやめんの?」 「充分なのだよ」 ドリンクボトルを高尾に返した緑間は床に転がっているボールをひとつずつ拾い始めた。 高尾はそれを手伝わない。 よくわからないが、手伝わないことになっているらしい。 「宮地サンは?まだ練習続けますか?」 「鍵の心配してんなら気にすんな。今日は俺が預かってる」 気がつかなかったふりをして、転がるボールを拾ってシュートを撃つ。 小さな動揺は大きな波となって集中力を簡単に乱すから嫌になる。 緑間は自分が使っていたボール籠を用具室に片付けると、お先に失礼しますと一礼をして体育館を出て行く。 目は一度も合わなかった。 そんな緑間を見送って、高尾は床に転がるボールをひとつ、ふたつと拾ってボール籠に投げ入れた。 「宮地サンは、緑間のこと好きなんですか?」 急に真剣な声音に変わるから、仕方なく高尾の方を向いた。 高尾の突き刺さすような鋭い目が直接届くから、本当に面倒くさい。 「緑間にも言ったことねぇのにお前に言えるわけねぇだろ」 無視できる問いとそうでない問いの違いくらい、簡単にわかる。 それを聞いてきた理由もわかるから、仕方がない。 「・・・すみません」 わかりやすくしゅんっと頭を垂れるのがおかしくて、笑いそうになる口元をぐっと堪えて、高尾の額をべしっと叩いた。 「さっさと帰れ。緑間が待ってんだろ?」 「俺は宮地サンのこと好きっすよ」 「このタイミングで言うことか」 好きにも種類がある。 さすがにそれくらいは判断できるくらいには、鈍くは無い。 「それもそーっすね。じゃ、お先に失礼します」 へらっと、いつも以上にすっきりした笑顔で高尾はふざけたように敬礼をして、走って体育館を出て行った。 急に静まり返った体育館でようやく息を吐くことができた気がした。 (簡単に好きだと言えるお前らが羨ましいなんて、一生言わねぇ・・・) 腹立ちをボールに込めて撃ったシュートは、音も無くゴールに吸い込まれた。 今日一日で、一番きれいなシュートだった。 終わり |
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2013/03/08 |
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※付き合ってない宮緑。 |
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