consideration

 
  ※rebelled→pained→ashamedの補足  
     
 


翌日の昼休み。
天気が良いからという理由と聞いて欲しい事があると、黒子は黄瀬に誘われてひとけのない屋上にやってきた。
青空が目の前に広がって、爽やかな風が吹き抜けていく。

「黒子っち、聞いてよ。緑間っちがひどいんスよ。青峰っちに好きだって言われてるのに嫌いって答えたそうなんス」

我慢が抑えきれない勢いで、黄瀬が話し出す。
ここ一週間の青峰と緑間の関係が不自然すぎる事は気付いていたけれど、練習に直接支障が合ったわけではなかったので、見て見ぬふりをしていた。
余計な事をしてさらに悪化するのは避けたかったし障らぬ神に祟りなしだ。

「何を考えているのかというのは、見ているだけではわからないですからね」

まず青峰が緑間に告白をしたという事実に驚く。
獲物を狙う肉食獣のように緑間を欲している事は知っていたけれど、好きだと伝えるのはもっと後になると思っていた。

(多分、売り言葉に買い言葉みたいな勢いで言っただけでしょうね)

青峰が素直に好きだと言いそうにもない。

「緑間っちは絶対青峰っちの事が好きなんスよ。なんで嫌いとか言っちゃったんスかね。オレは好きな人に好きって言われたらすっげー嬉しいっスよ?」

黄瀬が困惑した表情を隠さずに訴えてくる。
確かに、緑間は青峰の事が好きなのだと思う。
そう感じるくらいには、緑間の視線は青峰を追っている。
それは、観察するくらい良く見ていないと気付かないレベルの為、青峰が緑間の視線に気付く事はないだろう。
緑間もそれを見越して、青峰に気づかれないよう巧妙に視線を動かしている。
好きだから好きという考え方は悪くない。
通常、一般的な思考から言えば、自分が好意を持っている相手が自分の事を好きならば、両想いという事になる。
その事については何の障害もない。

「黄瀬君と緑間君は違いますから」

好きだから好きと即答する前に好きだと言われた後の事を考える場合もある。

「えー。黒子っちは、好きな人に告られたら好きって答えるっスか?」
「相手によります」

付き合う事になったら、現状の生活が変わらないわけがない。
特別な感情が芽生えるからだ。

「え?どーゆーことっスか?」
「黄瀬君にはきっとわからないと思います。そしてわからなくていいと思います」
「ほんとにわけがわかんねんスけど?」

黄瀬が首を傾げて、眉間に皺を寄せる。
好きだから好きだと言って好きだと言われたい。
両想いになって一緒にいたい。
それは誰もが思う共通事項だ。
たぶん、緑間もその点においてはなんら変わりはないだろう。

「僕は緑間君の気持ちが少しわかります」
「なんで?」
「好きだと言って、その後はどうしますか?」
「デートしたり、一緒に帰ったり、キスしたいっス」
「特別扱いするでしょう?」
「もちろんっス!好きなんスから」

特別扱いをされる。
それは、意識的にも無意識的にもだ。
日常生活では、かまわない。
では、バスケでは?
部活では?
二人の関係に変化が表れるのは、明らかだ。

「緑間君はそれが嫌なんだと思います」
「はぁ?なんで?」
「ほら、わからないでしょう?」
「ぜんっぜん、わかんねっス」
「だから、緑間君は青峰君に嫌いだって言うんです」

勝つ事が全ての世界で、勝つ為に厳しい練習にも耐えている。
好きだと言って、付き合う事になって、二人の間に芽生えた恋愛感情が何かに影響を与える。
それがモチベーションに繋がる可能性もあるけれど、障害になる可能性もあるのだ。
推測でしかないけれど、緑間はそれを恐れているのだろう。

「黒子っち、オレほんとにわかんねぇっス」
「黄瀬君はそれでいいと思います」

好きだから好きだと、素直に付き合える事の方が健全で幸せだと思う。
それでも、バスケを優先させてしまう緑間の生真面目さを不器用だとも思うし、緑間らしいとも思う。
黒子は目の前で首をひねる黄瀬に「この事は誰にも言わないでくださいね」と笑顔で釘を刺す。
せっかくの緑間の努力を無にするわけにはいかない。

「わかってるっスよ。緑間っちには緑間っちの考えがあるって事はわかったっスから」
「僕は青峰君の珍しい姿が見れて新鮮ですけどね」
「黒子っちって意外と観察好きっスよね」
「人間観察が趣味ですから」

それでも、本当の事は緑間にしかないし、緑間にしかわからない。

「黄瀬君はどうして緑間君が青峰君を好きだと思ったんですか?」
「緑間っちのフォームをコピーしようと思ってずっと見てたんス。でもできなかったんですぐにやめたんスけど」

そう言って黄瀬が笑う。
黒子もそれに応えるように小さく笑った。

「黄瀬君も観察好きという事になりますね」
「そんなことないっスよ・・・。見てるだけじゃわかんない事ばっかりっス」

視線、態度。
いくら隠そうとしても零れるくらいに、好きだという思いがそこにある。

(良く見ればわかる・・・ということですね)

青峰の真っ直ぐな思いを受け流すのは容易な事ではないだろう。
それでも緑間は敢えてそれを選択した。
二人の関係が今後どう変化するのかは、誰にもわからない。



終わり



 
     
 

2012/06/21

 
     
 

帝光中学時代 2年生。
青緑短編連作(※)の補足というか蛇足というか。
青峰を嫌いだという緑間についての考察。
黄瀬と黒子の会話中心です。
黒子は言葉は少ないけど頭の中ではいろんな事を考えてそうだなぁというイメージ。
緑間が何を考えているのかは誰もわからない。

 
 

※ rebelled → pained → ashamed